特別コラム

「ペットのための信託」

犬や猫をはじめとしたペットを飼っている方は多いですが、飼い主に万一のことがあった場合、のこされたペットがどうなるのか心配したことはありませんか。
今回は、そんなペットの将来を考えるときに知っておきたい「ペットのための信託」について紹介します。

【特別講師】
當舎社会保険労務士・行政書士法務事務所
社会保険労務士 行政書士 CFP®
當舎 緑氏

第1回

これからの終活にはペットのための遺言書も!

今や散歩に限らず、仕事でも通学でも外出した日に、ペットに一匹も会わない日はないといっていいほどです。それほど、ペットを愛する人は増え続け、今や子どもの出生者数約103万人に対し、犬猫の飼育数は約2100万匹(*注1)。そんな中、FPとして終活のセミナー講師をすることもある私が最近ちらほらと耳にするご相談は、「ペットが心配だから、入院できない」「ペットを老人ホームに連れて行くのはかわいそうだから、一軒家で一人暮らしは心配だけれど引越しはしたくない」などという内容。これからは、自分の終活だけでなくペットの終活を考えておく時代と言えるのかもしれません。

(*注1) 出生者数出所:厚生労働省平成24年人口動態統計。飼育数出所:一般社団法人ペットフード協会調べ

ペットのための終活ってどんなこと!?

終活の一歩。それは「遺言書を書く」ことから始まります。なんのためにどんなことを書くのかというと、ずばり、「相続人に迷惑をかけないために、自分の思いを伝えること」です。財産がたくさんあるから「遺言書を書く」のではありません。平均的なご家庭、例えば自宅が1軒に預貯金少しの財産を3兄弟で分ける場合を想定してみましょう。それぞれの思惑は意外と異なることに気が付くはずです。長男が「そのまま住みたい」ならば、次男が「売って均等にお金を分けて欲しい」。長女は「早くに家を出ているし、離れていながら介護を手伝ってあげたんだから、少し多めに財産を欲しい」など、幾通りもの兄弟の想いが飛び出すことも珍しくありません。親からすると、さらにペットをお願いするなんて躊躇してしまいそうです。そこで、ペットのために「遺言書」を活用してみるのです。

ペットのための遺言書のポイントとは : イメージ

ペットのための遺言書のポイントとは

ペットに直接財産をのこすことはできませんので、財産を贈与するかわりにこの子の世話を頼むという遺言書が考えられます。負担(=ペットのお世話)付き遺言書という形式です。この時のポイントは3つ。
「誰に頼むかの人選は慎重に選ぶこと。」
これはもちろん、大事なペットを預けると同時にお金を預けるのですから当然ですよね。また、黙って名前を書くだけでなく、相手の承諾を得ていないと、途中で放棄されては大変です。

「遺留分(*注2)侵害をしないような金額にすること。」
ペットがあまりに可愛くて、たくさんの財産をのこしてあげたくても、法定相続人が存在し、ペットにのこすお金によって各法定相続人の遺留分が侵害されてしまう場合は、争いの元となります。
「遺言執行者の指定など、監督機能を考えておくこと」
遺言書がその通りに実行されるような根回しをする、すなわち、ちゃんと監督してもらう仕組みを整えておくといいでしょう。

(*注2) 遺留分:兄弟姉妹以外の法定相続人に保障されている財産の取り分のこと。逆に言うと、兄弟姉妹には遺留分が認められていない。

遺言書にはリスクが伴う : イメージ

遺言書にはリスクが伴う

3つのポイントを守れない場合を想定してみます。
お金だけ受け取ってペットのお世話はしたりしなかったり。ペットのためのお金を預かっていただけなのに、これまでまったく音沙汰のなかった被相続人の息子が急に文句を言い始め、裁判所に訴えられる。受けた人は善意だったかもしれませんが、さすがに、ペットを預かって裁判所で争うなら、財産は返すからペットもいりませんということにもなりかねません。ペットの世話をお願いした遺言書があることを知らず、相続人で財産を分けてしまったものの、ペットの行き先に困り、たらい回しの末、捨てられてしまった。こんなことが可愛いペットに起こるかもしれないのです。もし、負担付の遺言書にする場合には、リスクを考慮してあとの争いを防ぐ文言にしなければならないのです。