保険お役立ちコラム
厚生労働省が2018年に発表した人口動態調査によると、がんが日本人の死因で一番多い結果となっています(※1)。その一方で、治療技術の進歩により、早期発見をしてきちんと治療をすれば治る病気へと変わってきています。治療費が高額なイメージがあるがんですが、「貯蓄や医療保険があれば入る必要がない」という人や、「がん保険の保険料まで払う余裕がない」という人も。がんにはどうやって備えたらいいのでしょうか。
- ※ 厚生労働省 平成30年(2018)人口動態統計
第6表「性別にみた死亡順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」
がん保険の基本
●がん保険の基本
がん保険は、がんの治療に特化した保険です。がんによる入院や手術、死亡等によって給付金、保険金を受け取れますが、その他の病気やケガで保障を受けることはできません。そのため、医療保険と組み合わせて加入すると、病気やケガに幅広く備えつつ、がんには手厚く備えられるようになります。
●がん保険の主な保障内容
(1)がん診断給付金
がんと診断されると受け取れる給付金です。ある程度まとまった金額が、入院日数や治療方法に関係なく支給されます。治療費としてはもちろん、生活費の補てんに使うこともできます。
がん診断給付金を比較するポイントは、①診断給付金の金額、②上皮内新生物も診断給付金の対象に含まれるか、③診断給付金の給付回数は1回だけか、複数回なのか、の3点になるでしょう。
このうち、②の上皮内新生物とは、臓器の表面を覆う上皮内にとどまっているがんのことを指します。上皮内新生物は手術によって取り除けるものが多いため、治療期間が比較的短く、治療費の負担も軽いと考えられます。そのため、上皮内新生物に対してはがん診断給付金を低額に設定したり、そもそもがん診断給付金を支払わないがん保険があります。いずれにしても、支払う保険料と給付金のバランスを見て選びたいですね。
- ※ がん保険は契約が成立してから90日以内は免責期間となります。免責期間内でがんと診断されていた場合は給付金は支払われず、契約は無効となります。
(2)がん入院給付金
「がん入院給付金」は、がんで入院したときに、入院日数に応じて受け取れます。医療保険では一般的に入院日数の上限が決まっていますが、がん保険では入院日数に上限が設けられていないので、入院が長期にわたっても「がん入院給付日額×入院日数」分の金額を受取れます。
(3)がん手術給付金
「がん手術給付金」は、がんで所定の手術を受けた場合に、「がん入院給付日額×〇倍」といった形で所定の給付金を受取れます。がんの手術は複数回にわたることもあるので、何度でも受け取れるかどうかも確認しましょう。
(4)抗がん剤治療給付金
「抗がん剤治療給付金」は、抗がん剤治療を受けた月に受け取れる給付金です。主ながんの治療方法には、手術、放射線治療、抗がん剤治療などがあります。抗がん剤治療給付金は、入院、通院、在宅療養のいずれでも抗がん剤治療中であれば受け取ることができます。
●がん保険と医療保険の違い
医療保険は、幅広い病気やケガに備える保険です。守備範囲が広い分、入院給付金額は1日5,000円や1万円程度となっています。また、入院給付金の支給日数も、1入院あたり60日や120日程度と上限が設けられています。
一方、がん保険は、がんになったときにだけ利用できる保険です。その他の病気やケガになっても保障されませんが、がんと診断されると100万円など診断給付金がまとめて支給されるほか、どんなに長期入院をしても入院した日数分の入院給付金が支払われます。がんに特化している分、がん保険ではがんへの保障が手厚い点が特徴です。
ただし、がん保険では、契約してから90日の免責期間が設けられています。がん保険に加入してから90日以内にがんと診断されても、給付金を受け取ることができないので気をつけましょう。

がん保険の必要性
●公的医療保険で間に合う?
公的医療保険には「高額療養費制度」があります。高額療養費の上限額は、年齢や所得区分によっても異なりますが、現役世代の中間所得層の場合、1か月あたりの医療費であれば、8万円台~10万円程度と思っていいでしょう。しかし、差額ベッド代がかかれば全額自己負担になりますし、公的医療保険が使えない先進医療を選べば医療費は高くなる可能性があります。
会社員や公務員の加入する公的医療保険には、「傷病手当金」の制度があります。病気やけがの治療で働けない期間も、給料の約3分の2が最長1年6ヶ月まで支払われるという制度です。とてもありがたい制度ですが、3分の2に減った収入で、治療費と生活費を両方払い続けるとなるとかなり生活が苦しくなることが予想されます。ましてや、こうした制度がない個人事業主の場合は、療養中の経済的負担は相当なダメージとなるでしょう。
●医療保険でカバーできる?
医療保険の主な保障は、入院給付金と手術給付金です。入院日数に応じて支払われる給付金と、手術を受けた時に支払われる給付金のため、通院しながら抗がん剤を投与して治療する場合などには、残念ながらこうしたタイプの医療保険では保障されません。
がん保険に加入していれば、がんと診断された場合まとまった額の診断給付金を受け取ることができるので、お金のことを気にしないで多様な選択肢の中から治療法を選択しやすくなります。
●貯蓄が十分にある場合は不要?
貯蓄がすでにしっかりあって、治療費をすべて貯蓄から取り崩しても、その後の生活が成り立つのであれば、もちろんがん保険は必要ありません。がん保険は、そもそも手術、放射線、抗がん剤などのさまざまな治療にかかる経済的負担に備えるためのものなので、治療費と治療による収入減少に十分耐えられる貯蓄があれば、保険料を払ってまでがん保険で備える必要はないからです。
ただし、公的医療保険が使えない特別な治療も視野に入れるなら、それなりの負担は覚悟しておいた方が良さそうです。例えば、がんの治療法のひとつである陽子線治療にかかる費用(※2)は平均で276万円というデータがあります。先進医療特約のついた医療保険に加入していればそちらでカバーされますが、そうでなければ、がん保険で備えておいた方がいいでしょう。
- ※2 陽子線費用にかかる費用
先進医療とは?どれくらい費用がかかる?:公益財団法人 生命保険文化センター
●治療費の負担例
35歳女性
乳がんで14日間の入院と、乳房の切除手術(腋窩リンパ節郭清あり※3)を1回行った場合。
- ※3 乳がんが転移したわきの下のリンパ節を周囲の脂肪ごと切除する手術
<初期治療にかかる費用>
治療費: 100万円×30%=300,000円
ただし、高額療養費が適用されるため、同一月内の入院だと以下のようになります。
80,100円+(医療費-267,000円)×1%
=80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%
=80,100円+7,330円
=87,430円
差額ベッド代:6,144円×14日=86,016円
食事代等:460円×3回×14日=19,320円
その他実費:2,000円×14日=28,000円(家族の交通費、備品購入などを想定)
自己負担合計:220,766円
保険に入っていなければ、治療等にかかった22万766円は貯蓄から取り崩して支払うことに。さらに、入院中や退院後の療養期間は、仕事を休むことになるため、収入ダウンも深刻な問題です。
- ※ 治療費の負担例
日本乳癌学会「患者さんの為の乳癌診療ガイドライン(初期治療費の目安)」
<がん保険に入っていた場合>
商品名:アクサダイレクトのがん終身
- ∟年齢・性別
- :35歳 女性
- ∟保険期間
- :終身
- ∟保険料払込期間
- :終身
- ∟がん入院給付金日額
- :1万円
- ∟付加特約
- :がん手術給付特約(終身型)、がん先進医療特約、がん退院療養特約(終身型)、女性がん入院特約
- ∟月額保険料
- :2,390円
- ※ 上記保険料は、2020年2月1日現在適用する保険料です。
がん診断給付金:100万円
入院給付金:1万円×14日=14万円
女性がん入院給付金:1万円×14日=14万円
がん手術給付金:10万円
退院後療養給付金:10万円
がん保険からの給付金額合計:148万円
上記のプランで加入していると、今回のケースではがん保険から148万円が支給されることになります。医療費の自己負担に加えて、治療による収入減も給付金でカバーできそうです。
がんに備えたいけれど、目先の保険料を少しでも抑えたいという人には、終身タイプの保険ではなく、定期タイプの保険という選択もあります。10年更新タイプのアクサダイレクトのがん定期の場合、加入から10年間は保険料が据え置きで上がることがありません。10年経って更新を迎えるときには、更新時の年齢の保険料に上がりますが、健康状態に関わらず更新できます。
- ※ 「アクサダイレクトのがん終身」と「アクサダイレクトのがん定期」では付加できる特約が異なります。

お金を気にせず治療したいなら、がん保険は必要
かつては怖い病気として恐れられていたがんですが、近頃は、早期発見をすれば治せる病気へと認識が変わってきています。定期的に健康診断をしっかり受けて、早期発見を心掛けましょう。万が一、がんが見つかっても、診断給付金が支払われるがん保険に入っておけば、治療費を気にすることなく治療に臨めます。
- ※ 当記事は著者個人の見解・意見によるものです。
- ※ 当記事の内容は作成日現在公表されている情報や統計データ等に基づき作成しており、将来予告なく変更されることがあります。
- ※ 当記事を参考にご加入中の生命保険の見直し・解約をされる際には、以下3点にご留意ください。
- ① 一度解約した生命保険契約はもとには戻らないこと。
- ② 解約返戻金は解約するタイミングによって、払込保険料の合計額よりも少なくなる場合があること(解約返戻金がない保険商品もあります)。
- ③ 健康状態によっては新たに保険に加入できなかったり、加入できても保険料の増加や一部の保障が対象外になるなど特別条件付きの契約となる場合もあること。
- ※ 当社保険商品の詳細につきましては、重要事項説明書/ご契約のしおり・約款を必ずご覧ください。

■ライター
氏家祥美(うじいえよしみ)
ファイナンシャルプランナー。ハートマネー代表。
お茶の水女子大学大学院修了。
2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち
2010年よりFP事務所ハートマネー代表となる。
「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、
子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持つ。
新作コラム
教育費は生命保険(死亡保険)で準備?子どもの教育費のための保険選び
更新型定期保険と全期型定期保険はどちらが良い?保険期間や特徴・選ぶときのポイント
【終身医療保険をわかりやすく解説】終身医療保険の特徴とメリット・デメリット
生命保険料控除証明書とは?証明書が手元に届く時期と控除を受けるための手続き
30代既婚男性が考えたい生命保険とは?おすすめの理由と備えておきたい保障を解説
【定期保険をわかりやすく解説】おすすめの人と種類、加入時の注意点を解説
養老保険・定期保険・終身保険の違いとは?項目別に解説
死亡保険金の相続税申告は漏れなく行おう!計算方法と申告方法
保険料が一括払いの死亡保険「一時払い終身保険」の特徴と注意点