保険お役立ちコラム

がん保険を選ぶ前に知りたい、標準治療、先進医療、自由診療の違い

公開日:2020/5/1

※本記事についてのご注意

がんの治療法には、公的医療保険が適用される「標準治療」、厚生労働大臣が定めた「先進医療」、公的医療保険が適用されない「自由診療」があります。がん保険に入る前に、今時のがんの治療法について理解しておきましょう。

標準治療とは

標準治療は、公的医療保険が適用される、一般的な治療です。標準治療は、各症状において最適とされた一般的な治療であり、基本的に全国各地の医療機関で、公的健康保険を利用して治療が受けられます。標準治療は、自己負担が原則3割負担になるというだけではありません。数多くの臨床結果から治療の効果や副作用などを調べたうえで、現在の治療法の中から最良の治療法として各病状に合わせて定められた治療法です。そのため、まずは標準治療を受けると考えましょう。

がんの標準治療は、外科手術、放射線治療、薬物療法

がんと診断されたら、外科手術、放射線治療、薬物療法などの標準治療の中から治療法が選択されます。複数の治療法を組み合わせて行われることもよくありますが、まずはこの基本的な治療法の違いを知っておきましょう。

・外科手術

外科手術は、がん細胞の塊が見られたときに、その塊を切り取って体外に取り出す治療法です。以前は胸や腹部をメスで切り開く手術がよく行われていましたが、近年は内視鏡を使った手術も増えてきて、体に小さな穴を開けるだけで済み、体に大きな傷をつけなくてもがんを取り除くことができるようになってきています。

・放射線治療

放射線治療は、体内のがん細胞を狙って放射線を照射して、がん細胞を死滅させる治療法です。がんの症状によって、性質の異なるいくつかの種類の放射線が使い分けられます。放射線治療には、手術のように体に直接傷をつけなくて済むメリットがありますが、周辺の臓器や細胞にも放射線が当たってしまうと正常な細胞にも悪影響を及ぼします。いかに正確に、狙ったがん細胞だけに照射するかが重要になります。

・薬物療法

薬物療法は、薬物を使って体内に潜んだがん細胞の増殖を抑える治療法で、抗がん剤治療やホルモン療法などはここに含まれます。錠剤やカプセルなどの飲み薬と、点滴や注射などで直接静脈に抗がん剤を注入する方法があります。

標準治療は自己負担額が3割に

このような標準治療であれば、公的医療保険が使えるため、原則3割の自己負担額で治療を受けられます。治療で自己負担額が高額になった場合には、高額療養費制度も利用できます。ただし、差額ベッド代など公的医療保険でカバーできない部分も考えられるため、民間医療保険の備えは必要になってきます。

先進医療とは

先進医療は、厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた治療法や療養で、有効性や安全性の評価をしている治療や手術です。先進医療は随時見直しがされており、新しい治療が増える一方で、先進医療から外される治療もあります。

先進医療の技術料は全額自己負担、診察や検査などには公的医療保険が使える

先進医療の技術料は全額自己負担になりますが、それと同時に行われた診察や検査、投薬や入院にかかる費用には、公的医療保険が利用できます。ただし、先進医療を受けられる医療機関は、厚生労働省に届け出を済ませた特定の医療機関に限られる点には注意が必要です。

がんの重粒子線治療には約300万円かかる

がんの治療法のなかにも先進医療として認められているものがあります。例えば、がんの重粒子線治療には、平均で約316万円の技術料がかかります。また、がんの陽子線治療には、平均で約270万円がかかります。がん治療は標準治療が基本になりますが、前もって民間医療保険に加入することで、治療法の選択肢の中に先進医療が入ってきたときに、治療費を気にせず治療に専念することができます。

図表1「先進医療の治療費一覧」
先進医療の例 年間実施件数 1件当たりの先進医療費用
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術 82件 301,951円
陽子線治療 1,293件 2,692,988円
重粒子線治療 562件 3,162,781円
抗悪性腫瘍剤治療における薬剤耐性遺伝子検査 227件 37,423円
ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法) 764件 28,388円
細胞診検体を用いた遺伝子検査 493件 78,072円
子宮内膜受容能検査 535件 123,438円

治療法には、公的医療保険が適用されない「自由診療」もあります。たとえば、日本では正式に承認されていない未承認薬を使用して、「自由診療」扱いとなった場合には、その薬代が全額自己負担になるのに加えて、診察・入院・検査代等も全額自己負担となります。

先進医療の場合には、診察・入院・検査代等は公的医療保険の対象となりますが、自由診療の場合には全て自己負担になります。このように経済的負担が大きい自由診療ですが、自由診療は先進医療とは異なる治療のため、先進医療特約ではその費用をカバーすることができません。

がんをサポートしてくれる公的制度

がんの標準治療では、公的医療保険が利用できます。そのため、自己負担は原則3割負担になりますし、入院や手術などにより自己負担が高額になった場合にも、高額療養費制度が利用できるため、1ヶ月の自己負担額を10万円前後に抑えることができます。(※1)

  • ※1 年齢や所得によって負担の上限額が異なります。

また、1年間に医療費を10万円以上負担した場合には、確定申告をすれば、支払った医療費に応じて納めた税金の一部が戻ってくる「医療費控除」という制度もあります。会社員や公務員として働いていて、健康保険組合や協会けんぽ等に加入している人であれば、入院や治療で長期間働けなくなった場合にも、給与の3分の2が「傷病手当金」として支払われます。(※2)このように、がんになったときにも利用できる公的制度やサポートはたくさんあります。

いざがんと診断されたときに、公的医療保険だけではやはり不安でしょう。高額療養費制度があるとはいえ、治療が長期化すればその分負担額は増えていきます。傷病手当金があれば、普段の収入の3分の2は保障されるというものの、治療費が出ていくなかで、働けないまま3分の1の収入ダウンが続いたら、家計としては大きなダメージとなるでしょう。退院した後も多くの場合で治療は続き、がんと向き合いながら生活をすることになります。

多くのがん保険では、契約成立から90日(3ヶ月)間の免責期間を過ぎてからがんと診断されると「がん診断給付金」が支払われます。これからどんな治療が始まるかわからないというときに、使い道を問わない一時金がもらえることは、気持ちの余裕につながります。また、入院した際に支払われるがん入院給付金には日数の上限が無いため、長期入院にも備えられます。

そのほか、抗がん剤による治療、手術、がんの先進医療など、気になる治療には特約を付加することで保障を上乗せすることもできます。医療保険に加入していなかったり、先進医療特約が付いていない場合には、がん保険でがん先進医療特約を付加しておきましょう。

がんの治療は、手術、放射線治療、抗がん剤治療などの薬物療法といった標準治療が基本となります。どの治療法が適しているかは一人一人異なります。必要な場合にだけ、技術料が自己負担となる先進医療などの選択肢も出てきます。使い道が自由な「がん診断給付金」や、先進医療特約による先進医療への備えがあると、多様ながんの治療に対応しやすくなります。

ライター

氏家祥美(うじいえよしみ)

ファイナンシャルプランナー

ハートマネー代表

お茶の水女子大学大学院修了。
2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち
2010年よりFP事務所ハートマネー代表となる。
「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、
子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持つ。

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