保険お役立ちコラム
がん保険に入る理由と、がん保険から受け取れる給付金の種類と詳細、選び方のポイントを解説します。年代やライフスタイル、家計の状況などによって、がん保険を選ぶポイントが異なります。自分に合ったがん保険を選べるようになりましょう。
目次
そもそもがん保険はなぜ必要なのか
がんは日本人の死因で第1位の病気です。しかし、がん検診や治療の技術も進歩しているため、がんの治療を受けながらも、普通の暮らしをしている方も大勢います。がん検診を受けてなるべく早期発見をすること、適切な治療をできるだけ早く受けることがとても重要になります。
医療保険に加入していれば、がんになった場合でも、入院すれば入院給付金、手術を受ければ手術給付金が支払われます。通院特約や女性疾病特約を付けていれば、がんの種類や治療内容によってはそれらの給付金を受け取れる可能性もあります。
また、公的医療保険には高額療養費制度があるため、治療費が高額になった場合にも自己負担額には上限が設けられています。
それにもかかわらず、なぜ、がん保険が必要なのでしょうか。
理由は、がん保険には民間の医療保険や公的医療保険制度にはない保障があるからです。
がん保険の主な保障内容は、以下の通りです。
- ●がんと診断されたときに一時金が受け取れる「がん診断給付金」
- ●がんで入院すると入院日数無制限で受け取れる「がん入院給付金」
- ●がんの手術で受け取れる「がん手術給付金」
- ●抗がん剤治療を受けた月に受け取れる「抗がん剤治療給付金」
- ●入院して放射線治療を受けるたびに受け取れる「放射線治療給付金」
これらの給付金の詳細や、その他の保障については後述しますが、がんになったときには治療以外にもさまざまな費用がかかります。がんになったときの肉体的・精神的負担を緩和するためにも、金銭的な負担を十分カバーできるがん保険の加入は、検討しておく必要があるでしょう。
- ※ 参照 令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/kekka.pdf
- 関連記事:「がん保険に入るか悩んでいる人へ罹患リスクと必要性を解説」
- 関連記事:「がんの治療に必要な費用とは?がん保険の必要性と選び方」
がん保険の加入率は年々増加している
生命保険文化センターの調査によると、がん保険・がん特約に加入する方の割合は、世帯主も配偶者もそれぞれ年々増加傾向にあります。がん保険の種類が増えて、選択肢の幅が広がっていることも加入者が増えている理由の一つと考えられます。
世帯 | 世帯主 | 配偶者 | |
---|---|---|---|
2021(令和3)年 | 66.7% | 60.1% | 43.6% |
2018(平成30)年 | 62.8% | 55.3% | 43.5% |
2015(平成27)年 | 60.7% | 53.4% | 40.2% |
2012(平成24)年 | 62.3% | 54.5% | 41.5% |
2009(平成21)年 | 59.5% | 53.3% | 36.7% |
- ※ 民保(かんぽ生命を除く)に加入している世帯が対象。
- ※ ガンで入院したときに入院給付金が受け取れる生命保険、あるいは特 約が付加された生命保険であり、生活習慣病(成人病)特約、損害保 険は含まれない。
- ※ 出典 生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査<速報版>
(2)ガン保険・ガン特約の加入率、入院給付金日額」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/sokuhoubanR3.pdf
がんに罹患した際に掛かる費用
がんに罹患した際に掛かる費用の項目をまとめました。
- 【がんの治療にかかる費用】
- ●検査費用
- ●診察費用
- ●入院費用
- ●手術費用
- ●薬代
これらの費用は、公的医療保険の高額療養費制度である程度カバーできますが、高額療養費制度でカバーされるのはあくまで治療費の部分だけです。間接的に発生する【その他にかかる費用】までカバーできるわけではありません。
- 【その他にかかる費用】
- ●病院までの交通費
- ●診断書や証明書の作成代
- ●入院時の個室代や差額ベッド代
- ●入院時の食事代
- ●健康食品、サプリメント、漢方など、標準的な治療以外の民間療法代
- ●入院中の衣類や下着代など
- ●外見の変化に対応するウィッグ代など
- ●家事や育児を外注する際の家事代行、ヘルパー、ベビーシッター代など
がんの治療中は入院や通院でそれまでのように働けず、収入が減少する場合もあります。がんの治療に備える費用は、医療費だけでなく、こうした見えない費用や収入減少にも考慮しておく必要があります。
がん保険の選び方
がん保険を選ぶ際に注目したいポイントを紹介します。保険期間は「終身型」か「定期型」か、保険料の支払い方法は「終身払い」か「短期払い」か、給付は「実額補償」か「定額保障」か、それぞれのメリットとデメリットについて考えていきましょう。
がん保険の保険期間で選ぶ
がん保険の保険期間には、一生涯を保障する終身型と、一定期間を保障する定期型があります。それぞれの保険期間の特徴と選び方について、解説します。
終身型
- 【メリット】
- ●保障がずっと続くので、老後も安心感がある
- ●保険料は加入時のままずっと変わらない
- 【デメリット】
- ●同じ保障内容で比較した場合、定期型よりも終身型のほうが保険料が高くなりやすい
- ●保障内容が、医療の進歩に合わなくなる可能性がある
終身型のがん保険は、保障が一生続く安心感がある、保険料が一生上がらないといったメリットがあります。
一方、加入時の保険料を同じ保障内容の定期型と比較した場合には、終身型のほうが、保険料が高めになる傾向があります。さらに、若い方が終身型のがん保険に加入する場合には、加入期間がとても長くなるため、次第に保障内容が医療の進歩に合わなくなる可能性があります。
定期型
- 【メリット】
- ●若い頃は終身型に比べて、お手頃な保険料で加入できる
- ●更新時のタイミングで保険内容の見直しをしやすい
- 【デメリット】
- ●更新を迎えるたびに保険料が高くなる
- ●一定の年齢で更新ができなくなり、保障が途切れてしまう
定期型のがん保険は、加入してから一定期間だけを保障します。そのため、特に若い時にはお手頃な保険料で加入することができます。当初の保険期間が終わると、自動更新で保障を継続できますが、更新をするたびに保険料が上がります。
また、更新には限りがあるため、一定年齢、一定年数を超えると、更新できなくなる点には注意が必要です。
当面のがん保障をお手頃な保険料で備えたい方、医療の進歩や新しいがん保険の発売に伴って、保障を見直したい方には定期型のがん保険が向いているでしょう。
がん保険の保険料の支払い方法で選ぶ
保険料の支払い方法には、終身払いと短期払いがあります。それぞれのメリットとデメリットについて解説します。
終身払い
- 【メリット】
- ●お手頃な保険料で保障を備えられる
- ●保険を見直しやすい
- 【デメリット】
- ●高齢になっても保険料の負担が続く
終身払いとは、保険料を一生にわたって支払う方法です。短期払いに比べると毎月の保険料がお手頃な傾向があるため負担感が少なく、必要な保障を備えやすくなります。ただし、高齢になってもずっと保険料の負担が続きます。
将来的に保険を見直す可能性がある方は、短期払いよりも終身払いのほうが向いているでしょう。
短期払い
- 【メリット】
- ●早目に保険料の支払いを終えることで、老後の保険料負担がなくなる
- 【デメリット】
- ●1ヶ月あたりの保険料負担が大きくなる
短期払いは、60歳まで、65歳までというように一定の年齢で保険料を払い終える方法です。
短期払いのメリットは、早めに保険料を払い終えることで、老後に保障を維持しつつ、保険料の負担がなくなります。支払い期間中の1ヶ月あたりの保険料は、終身払いに比べて大きくなるため、家計にとって負担が重くなる可能性があります。
がん保険の給付形態で選ぶ
がん保険は、損害保険のように「実額補償」をするタイプと、他の生命保険と同様に「定額保障」するタイプがあります。それぞれの違いやメリット・デメリットを確認しておきましょう。
損保商品に多い「実額補償」
- 【メリット】
- ●先進医療の技術料や自由診療についても実際にかかった費用が補償される
- ●高額な治療にも対応しやすい
- 【デメリット】
- ●定期型のため更新のたびに保険料が上がる
- ●更新可能年齢には上限があるため、一生涯にわたる保障は確保できない
実際にがんの治療にかかった費用を全額補償するタイプのがん保険です。公的医療保険の対象となる治療に限らず、先進医療や自由診療も実際にかかった金額が保険から支払われます。先進医療や日本では未承認の抗がん剤などの治療にも備えたい方に向いています。
注意点としては、実際に治療にかかった費用を補償するため、収入減少やウィッグの購入など治療外の費用には備えられないことがあります。また、更新のたびに保険料が上がり、更新できる年齢には上限があります。
生保商品は原則「定額保障」
- 【メリット】
- ●がんと診断されたら、まとまった金額を受け取れる
- ●使い道が自由なため、給付金を治療費以外にも活用しやすい
- 【デメリット】
- ●自由診療には備えにくい
がんと診断されたときや、入院・手術をしたとき等に、契約時に決めた給付金額が支払われるタイプのがん保険です。実際にその金額がかかっていなくても「がん診断給付金」が支払われ、用途も治療費に限定されていないことから、がんにより収入が減少したときの生活費補填や、ウィッグの購入費などにも活用できます。
年齢を基準に選ぶ
年代によってがんの罹患率は異なりますし、家計の状況もライフイベントも異なります。年代ごとのがん保険の選び方を解説します。
20代
罹患率はまだ低い世代ですが、この年代でがんにかかると進行が早いので注意が必要です。
他の年代に比べて収入が低く、ライフプランが固まっていない方が多いので、シンプルな保障で見直しやすいがん保険が適しています。がん診断給付金のみのシンプルながん保険や、保険料がお手頃で後々保障を見直しやすい定期型のがん保険を検討してみましょう。
30代から40代
結婚、出産、住宅購入といったライフイベントを経験する方が増える年代です。最近では共働き家庭が増えており、夫婦で家計を担いつつ、家事や子育ても協力して行う夫婦が増えています。この場合、夫婦どちらかががんになると、収入が減るばかりか、家事や育児も滞ってたちまち困ってしまいかねません。
定期的にがん検診を受けたうえで、夫婦それぞれがん保険に加入しておくことが大切になるでしょう。
特に、30代女性は、乳がんと子宮がんの罹患率が高まります。がん検診で初期段階のがん(上皮内新生物)が見つかったときも保障されるがん保険や、女性であれば乳がんなど女性特有のがんに特化した女性向けがんの特約付帯も検討してみましょう。
- ※ 参照 国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」
小児・AYA世代のがん種の内訳の変化
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/child_aya.html
40代から50代
本格的にがんの罹患率が高まる年代です。より手厚い保障内容のがん保険を検討しましょう。がん診断給付金、入院給付金や手術給付金に加えて、先進医療にも備えておくと治療の幅が広がります。
これまで定期のがん保険に加入していた方は、将来を見越して、がんの終身保険に切り替えておくと、がんの保障を一生涯にわたって継続できます。
- 関連記事:「40代におすすめのがん保険とは?選び方とポイントを紹介」
- 関連記事:「50代でおすすめのがん保険とは?選び方とポイントを紹介」
50代以上
50代以降、60代、70代とますますがんの罹患率は高まっていきます。その一方で、50代はまだ、住宅ローンの返済、子どもの教育費、親の介護など、家計の中にさまざまな固定費を抱えている方が多い年代です。もしもがんにかかっても、お金のことを気にせずに安心して治療が受けられるように、がん保険に加入しておきましょう。
また、かなり前からがん保険に加入している方は、一度その保障内容を確認しておきましょう。ひと昔前のがん保険は入院給付金や手術給付金が保障の中心でしたが、図表2から分かるように、以前に比べるとがん治療での入院日数は短期化傾向にあるため、保障の見直しが必要といえます。
平成8年(1996年) | 令和2年(2020年) | |
---|---|---|
すべての傷病 | 40.8日 | 32.3日 |
がん(悪性新生物) | 46.0日 | 19.6日 |
- ※ 参照 厚生労働省「令和2年(2020)患者調査の概況 統計表7」より著者作成
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/dl/toukei.pdf
がんと診断されたらまとまった一時金が支払われるがん保険や、実損型のがん保険など、最近の治療法に対応した保険に見直しておくことをお勧めします。
経済状況を基準に選ぶ
ライフスタイルや家計の状況によっても、がん保険の選び方は変わってきます。経済状況を基準にした選び方を解説します。
単身世帯の場合
単身世帯の場合には、医療への備えが重要になります。がんのリスクは年齢が上がるほど高まっていきますが、がんの治療は退院して終わりではありません。退院後も薬物療法や検査で通院をすることも多く、収入が減少することもあります。
もしもがんになったときに、お金の心配をしないで治療に専念できるように済むように、がん保険に加入しておきましょう。
がん定期保険のほうが目先の保険料は安くできますが、40代に入ったらがん終身保険に切り替えて、一生涯の保障を確保することをおすすめします。
子育て世帯の場合
子育て世帯では、子どもの塾代や授業料、住宅ローンなどで家計に占める固定費が多く、十分な貯蓄ができていない世帯も少なくありません。子育て世帯では、医療保険に加えて死亡保険も必要なので、がん保険にはあまり保険料を支払えないと思う方もいるでしょう。
目先の保険料を抑えながらがん保険に加入するには、一定期間だけを保障する「がん定期保険」に加入するか、がん終身保険を「終身払い」するといいでしょう。
がん保険で受け取れる給付金
がん保険で受け取れる給付金には、さまざまな種類があります。主契約になっているものもあれば、特約として選ぶものもあります。
がん診断給付金
所定のがんと診断確定されたときに受け取れる給付金です。給付金の金額は保険会社や契約プランによって違いますが、治療の有無にかかわらずまとまった給付金を一括で受け取れる、がん保険ならではの保障です。
がん診断給付金は、保険期間を通じて1回限りの給付になるもの、2年に1度など制限付きのものなどがあります。また、上皮内新生物に対する支払いの有無や条件も、保険会社によって異なります。
がん手術給付金
がんの治療で所定の手術を受けたとき、手術1回につき数万円~10万円・20万円程度の給付金を受け取れます。
いわゆるがんの3大治療は「手術療法」「放射線療法」「薬物療法」ですが、このうち手術療法と放射線療法はがん手術給付金で対応できるケースが多くなっています。
ただし、保険会社によっては入院をともなうことが条件になっていたり、支払回数に条件が付いていたりします。また、給付金額も保険会社や契約プランによって異なるのでよく確認しておきましょう。
がん入院給付金
がんの治療を目的に入院したとき、入院した日数に応じて受け取れる給付金です。1日5,000円、1万円といった給付金日額に入院日数を乗じた金額が、がん入院給付金で受け取れる給付金の合計金額です。
多くの場合、がん入院給付金には支払限度がなく、入院日数無制限で受け取れるものになっています。100日を超える入院でも全入院日数分の保障を受け取れるため、長期のがん入院に備えられるのが特徴です。
がん通院給付金・抗がん剤治療給付金
がんの治療を目的に通院をしたときに一定の保障を受けられる給付金は、多くの場合にベースとなる主契約部分の保障に特約(オプション)として付帯するもので、以下のような種類があります。
- ●がん通院給付金:「通院日額×通院日数」の合計金額を給付金として受け取れる
- ●抗がん剤治療給付金:がんの治療で抗がん剤治療を受けたとき、入院・通院(往診を含む)を問わず定額の給付金を受け取れる
それぞれ受け取れる保障は違いますが、通院しただけで保障を受けられる点は共通しています。がんは通院治療が増えているという調査もあり、需要のある給付金といえるでしょう。
がん先進医療給付金
がんで所定の先進医療を受けたとき、先進医療の技術料相当額を保障します。ただし、保険会社ごとに上限額が設定されているため、その範囲内での支払いになります。
先進医療とは、厚生労働大臣が定める高度の医療技術のうち、公的医療保険制度の対象にならない治療です。がんの先進医療には、陽子線治療や重粒子線治療があり、いずれも1回あたり高額な治療費がかかります。
なお、医療保険に先進医療特約を付けている場合には、そちらでがんの先進医療も保障されます。
がん保険はライフスタイルや家計の状況に合わせて選ぶ
若いうちは、がんの罹患率はまだ高くないものの進行が早く、年齢が上がるにつれて罹患率が高まっていきます。がん保険は定期型や終身型、実額補償と定額型など、さまざまなタイプがあります。家計や暮らしの状況を考慮しながら、無理のない形で備えつつ、必要に応じて見直していきましょう。
- ※ 当記事は著者個人の見解・意見によるものです。
- ※ 当記事の内容は作成日現在公表されている情報や統計データ等に基づき作成しており、将来予告なく変更されることがあります。
- ※ 当記事で書かれている保険の内容には、アクサのネット完結保険では取り扱いのない商品や手続きがございます。
- ※ アクサのネット完結保険の保険商品の詳細につきましては、重要事項説明書/ご契約のしおり・約款を必ずご覧ください。
- ※ 当記事を参考にご加入中の生命保険の見直し・解約をされる際には、以下3点にご留意ください。
- ① 一度解約した生命保険契約はもとには戻らないこと。
- ② 解約返戻金は解約するタイミングによって、払込保険料の合計額よりも少なくなる場合があること(解約返戻金がない保険商品もあります)。
- ③ 健康状態によっては新たに保険に加入できなかったり、加入できても保険料の増加や一部の保障が対象外になるなど特別条件付きの契約となる場合もあること。
- ※ 個別の税務等の詳細については税務署や税理士等、専門家にご確認ください。
ライター
氏家祥美(うじいえよしみ)
ファイナンシャルプランナー
ハートマネー代表
お茶の水女子大学大学院修了。
2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち
2010年よりFP事務所ハートマネー代表となる。
「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、
子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持つ。