保険お役立ちコラム
近年では、がんの治療方法が進化しており、入院日数が短期化しています。通院で抗がん剤治療を受ける人も多くいらっしゃいます。このような場合に備えられる保障はあるのでしょうか。
抗がん剤治療とは
抗がん剤治療は、がん細胞の増殖を抑えるために抗がん剤を使用する治療方法です。抗がん剤にはさまざまな種類がありますが、錠剤やカプセル型の飲み薬と、点滴や注射などで注入するタイプに分けられます。抗がん剤を1種類だけを使うこともあれば、複数の抗がん剤を組み合わせて使うこともあります。
標準的ながんの治療法は3つ
がんの標準的な治療法には、手術、放射線治療、抗がん剤治療の3つがあります。
このうち、手術や放射線治療はがんのある場所を直接狙う局所的な治療になりますが、抗がん剤治療の場合には、抗がん剤を全身に巡らせることでより広範囲への効果を期待できます。そのため、がんが転移した可能性があるときや、転移を予防したいとき、血液やリンパのがんにも使用されます。
また、手術や放射線治療と組み合わせて抗がん剤治療を行うこともあります。
抗がん剤で見られる副作用
抗がん剤は、本来の攻撃対象であるがん細胞だけでなく、活発に増殖する正常な細胞に対しても同じように影響を与えます。このことで身体に起こるさまざまな影響を「副作用」と呼んでいます。副作用としては、吐き気やだるさ、食欲低下、下痢、脱毛などがあります。
副作用の出方は、使用する抗がん剤の種類や量、使用期間などによっても異なります。
抗がん剤治療にかかる期間
抗がん剤治療のスケジュールは、使用する抗がん剤の副作用を考慮して決められます。点滴や注射による抗がん剤は毎日投与するわけではなく、治療後にしばらく休養期間が設けられます。
投与期間と休養期間を合わせて1サイクル(1クール、1セット)として、病状や副作用の状況を確認しながら複数サイクルを繰り返して治療を進めます。
抗がん剤治療にかかる費用や負担額
抗がん剤の治療といっても、抗がん剤にはさまざまな種類があります。がんの種類や進行具合によって、選ぶ抗がん剤が変わってくるため、費用が異なります。
また、同じ抗がん剤を使っても、本人の体格によって1回あたりの使用量が異なります。また、投与回数や治療期間も人それぞれです。そのため、一人ひとりの状況によって、抗がん剤による治療費は異なります。
公的医療保険の適用範囲内の治療であれば、後述する高額療養費制度なども利用できるため、医療費の自己負担には一定の上限があります。
●公的医療保険の対象となる費用の例(高額療養費の対象となる)
- ・検査費
- ・診察費
- ・治療費(抗がん剤治療等)
- ・入院費
抗がん剤治療を受けるうえでは、治療費のほかにも自己負担となる費用についても念頭に入れておきましょう。
●公的医療保険の対象とならない費用の例(自己負担となる)
- ・先進医療の技術料
- ・差額ベッド代
- ・入院中の食費負担金
- ・診断書などの文書代
- ・医療用ウィッグ
- ・見舞いに来る家族の交通費や宿泊費
- ・公的医療保険の対象外の治療費
- 関連記事:「がんの治療に必要な費用とは?がん保険の必要性と選び方」
抗がん剤治療には高額療養費制度の活用も可能
すでにお伝えしたように、抗がん剤治療には、さまざまな費用がかかります。少しでも経済的な負担を軽減できるように、利用できる制度を確認しておきましょう。
高額療養費制度は、医療費の自己負担額が高額になるのを防ぐために、1ヶ月の医療費自己負担額に上限を設ける制度です。毎月1日から末日までに負担した医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に申請をすると、あとから限度額を超過して負担した分の払い戻しが受けられるという制度です。
対象となる費用は、健康保険の適用となる費用です。医療機関や薬局の窓口で支払う費用であっても、差額ベッド代や食費などは対象になりません。1ヶ月あたりの上限額は、1ヶ月あたりの所得や年齢によって決められています。
69歳以下の世帯(年収約370~約770万円の世帯)の場合、1ヶ月あたりの上限額は「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」となります。ただし、高額療養費の上限額は5段階に分かれていて、年収によって計算方法が異なります。
また、70歳以上の世帯は所得水準によって区分が6段階に分かれています。年齢や年収によって、1ヶ月あたりの上限額が変わってきますので、当てはまる年齢と年収において上限額を確認しておきましょう。
- ※ 参照 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆様へ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
がん保険の抗がん剤治療特約とは?
がん保険によっては、がん診断給付金やがん入院給付金などの基本保障のほかに、特約として、抗がん剤治療特約を付加できるものもあります。
抗がん剤治療特約を付けておくと、抗がん剤治療を受けたあとに保険会社に請求をすれば、抗がん剤治療を受けた月の給付金を受け取れます。抗がん剤治療は、がんの状態やステージによって継続して行うこともあり、治療期間が長期にわたることもあります。
がん保険の主な保障であるがん診断給付金は、がんと診断されたときに受け取ります。がん入院給付金は、入院日数に応じて受け取るものなので、退院したら終了します。その点、抗がん剤治療特約を付加していれば、通院で抗がん剤治療を受けた場合に備えることができます。
抗がん剤治療特約は以下のポイントに注目して選びます。
抗がん剤治療給付金の受取額
抗がん剤治療給付金は、抗がん剤治療を行った月には月額いくらといった形で支払われる保障内容が多くなっています。1ヶ月あたりにいくら受け取れるかを確認しておきましょう。
支払い限度月数
抗がん剤治療給付金は最大何ヶ月まで支払うかが定められています。回数無制限としている保険会社と、上限回数を設けている保険会社があります。上限回数は、通算60回としている場合が多いようです。無制限のほうが保障は手厚くなりますが、その分が保険料に反映されていることも考えられます。
特約の期間は終身か更新型か
抗がん剤治療特約は終身型か、更新型も確認しておきましょう。例えば、がん終身保険に加入している人の抗がん剤治療特約が更新型の場合、主契約であるがん終身保険の保険料は変わりませんが、抗がん剤治療特約の特約保険料は、更新時期が来ると上がります。
抗がん剤の種類によっては適用外になる場合もある
国内で認可されている健康保険適用の抗がん剤を対象としている場合が多くなります。その場合、日本で承認されていない抗がん剤を使用した場合には、給付金の支払い対象外となるので注意しましょう。
がん保険を選ぶポイント
がんの種類や進行具合等によって治療法が異なるため、がんと診断された時点では標準治療のうち、どの治療法になるかわかりません。
そこで、がんと診断されたときに「がん診断給付金」が支払われるがん保険を選んでおくと、どの治療法になっても対応しやすくなります。がんと診断されると支払われるため、治療の早い段階で給付金を受け取れることも安心感があります。
抗がん剤治療は、手術や放射線治療と組み合わせて行うこともありますし、転移や再発を防ぐために退院後も継続して抗がん剤治療を行うこともよくあります。がん保険の特約として「抗がん剤治療給付金特約」を付加しておくと、入院中および退院後の抗がん剤治療にも備えやすくなります。
がん保険加入時には抗がん剤治療特約の検討を
がん診断給付金(一時金)があれば、どの治療法を選んでも対応することができますが、さらに上乗せして抗がん剤治療に備えたい、退院後の治療にも備えたいという場合には、抗がん剤治療特約を付加することも検討しましょう。
抗がん剤治療を受けた月には給付金を受け取れるため、治療中の医療費や生活費の補填などに活用できます。
- ※ 当記事は著者個人の見解・意見によるものです。
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- ※ 当記事を参考にご加入中の生命保険の見直し・解約をされる際には、以下3点にご留意ください。
- ① 一度解約した生命保険契約はもとには戻らないこと。
- ② 解約返戻金は解約するタイミングによって、払込保険料の合計額よりも少なくなる場合があること(解約返戻金がない保険商品もあります)。
- ③ 健康状態によっては新たに保険に加入できなかったり、加入できても保険料の増加や一部の保障が対象外になるなど特別条件付きの契約となる場合もあること。
- ※ 個別の税務等の詳細については税務署や税理士等、専門家にご確認ください。
ライター
氏家祥美(うじいえよしみ)
ファイナンシャルプランナー
ハートマネー代表
お茶の水女子大学大学院修了。
2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち
2010年よりFP事務所ハートマネー代表となる。
「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、
子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持つ。