保険お役立ちコラム
自営業や個人事業主が病気やケガで働けなくなったとき、障害を負ったときには、会社員や公務員以上に大きなリスクがあります。傷病手当金や障害年金制度の違いから、自営業者や個人事業主が就業不能保険で備える理由について解説します。
目次
就業不能保険とは?
就業不能保険は、病気やケガの治療で長期間働けなくなった場合の収入減少に備える保険です。
治療中は治療費として支出が増える一方で、働けなくなり収入が減少します。医療保険やがん保険では、病気やケガの治療費には備えられても、収入減少にまでは備えきれません。治療中でも、教育費や住宅ローン(※1)などを含めた生活費はいつも通りにかかることから、収入減少に備えるための就業不能保険が近年注目されています。
- ※1 住宅ローンの場合、団体信用生命保険の特約により、支払い免除になることがあります。
多くの就業不能保険には60日間の免責期間があり、働けない状態が60日以上続いた場合に、毎月定額の給付金が支払われます。入院に加えて、医師の指示による在宅療養を支払いの対象とするほか、保険会社によっては保障の対象に障害等級を設定している場合もあります。
働けなくなった場合に、どの程度の収入が不足するのかを想定して、給付金額を設定しておくとよいでしょう。
自営業や個人事業主の人に就業不能保険が必要な理由
自営業や個人事業主の人に就業不能保険が必要な理由は、大きく2つ挙げられます。
収入の保障がない
個人事業主やフリーランスなど自営業者が加入する国民健康保険には、傷病手当金の制度がありません。
傷病手当金とは、病気やケガの治療で休業した場合、休業4日目から通算で1年6ヶ月までの間、標準報酬日額の3分の2が健康保険から支給される制度です。会社員や公務員はこの制度を利用できますが、自営業者は利用できません。そのため、治療が長期にわたって働けない期間が続いても、収入の保障がないのです。
傷病手当金の支給には条件があります。詳しくは全国健康保険協会のホームページをご覧ください。
- ※ 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139/
障がい認定されても障害基礎年金のみ
初診日から1年6ヶ月が経っても傷病が治らない場合や、それ以前に症状が固定して一定の障害状態になると、国が規定した障害の状態を基準として障害認定を受けることになります。
会社員や公務員等の厚生年金加入者が障害認定を受けると、障害基礎年金と障害厚生年金が支給されます。一方、国民年金に加入する自営業者が障害を負った場合には、障害基礎年金だけしかありません。
また、障害基礎年金は1級と2級までとなっていて3級がないことから、軽度な障害の場合には障害年金の対象から外れます。
- ※ 参照 日本年金機構「障害認定基準」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/index.html
自営業者、専業主婦など (国民年金) |
会社員・公務員など (厚生年金) |
||
---|---|---|---|
受け取る年金 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 障害基礎年金 |
|
年金の受け取りケース | 障害等級1級・2級となった被保険者が受け取れる | ・障害厚生年金は、障害等級3級の年金や、3級より軽い場合の手当金(一時金)も受け取れる ・障害基礎年金の受給は左記と同じ |
|
障害等級に応じた支給額 | 1級 | 67歳以下の人:年間993,750円 68歳以上の人:年間990,750円 |
障害基礎年金を含めて 67歳以下の人:年間1,850,841円 68歳以上の人:年間1,847,841円 |
2級 | 67歳以下の人:年間795,000円 68歳以上の人:年間792,600円 |
障害基礎年金を含めて 67歳以下の人:年間1,480,673円 68歳以上の人:年間1,478,273円 |
|
3級 | なし | 年間685,673円 |
- ※ 障害基礎年金には、障害等級1級、2級で子どもがいる場合に子どもの加算がつく
- ※ 障害厚生年金には、配偶者加給年金がつく
- ※ 障害厚生年金には、被保険者期間が300月に満たない場合でも、300月加入したものとして計算される
- ※ 出典 生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/8755.html
自営業や個人事業主の人が就業不能保険に加入するメリット
自営業や個人事業主の人が就業不能保険に加入するメリットは、大きく2つ挙げられます。
働けない期間の収入減少への備えとして
自営業者や個人事業主が病気やケガの治療で働けなくなっても、傷病手当金を受け取れません。働けない期間がそのまま収入ゼロとなる可能性もあるため、自分で備えておく必要があります。
障害年金不足への備えとして
自営業者や個人事業主に対する障害年金は、会社員や公務員よりもわずかです。治療を続けても状況が回復せずに障害状態が続いた場合にも、長期で受け取れる就業不能保険を備えておけば、障害年金の不足分を補うことができます。
自営業や個人事業主の人が就業不能保険の契約前に知っておきたいポイント
就業不能保険を契約するときのポイントは、給付額の決め方、支払い対象外期間と支払い削減期間、保険期間、支払いの対象外となるケースの4つあります。
給付額の決め方
就業不能状態になったときに、生活費としていくら不足するかを想定して決めましょう。現在の家族の生活費から、配偶者等の収入を差し引くと、働けなくなったときに不足する生活費が計算できます。
備えたい給付金額=家族の生活費-配偶者等の収入
例えば、1ヶ月の生活費が35万円で、配偶者の収入が15万円の家庭の場合、就業不能保険で20万円を備えることになります。
なお、1ヶ月あたりの生活費がよくわからないという場合は、世帯の手取り月収から毎月の貯蓄額を差し引くと、1ヶ月あたりの家族の生活費が計算できます。
支払い対象外期間、支払削減期間の考え方
就業不能保険では、働けなくなった日から最初の60日を支払い対象外としています。これは多くの就業不能保険で共通していますが、その後の支払いが選択できる場合があります。
(1)満額タイプ:60日の支払い対象外期間が終わると、すぐに給付金を満額受け取れるタイプ
あらかじめ定めた保険期間の中であれば、治療のために働けない状態が続く限り支払いが続く保険や、あらかじめ選択した一定年数の支払いを約束している場合があります。働けない状態を証明するため、定期的に医師の診断書の提出が必要になる場合もあります。
自営業者や個人事業主にはこのタイプが向いています。傷病手当金がないため、病気やケガで働けなくなると、収入がなくなる方が多いからです。その間に代わりに作業できる方を雇う場合でも、人件費が増すため収入減少につながります。
なお、うつ病など精神疾患を保障の対象とするかどうかは、保険会社ごとに異なります。こうした点も比較しながら選ぶとよいでしょう。
(2)ハーフタイプ:60日の支払い対象外期間が終わると、1年6ヶ月までは半額支給するタイプ
支払い対象外期間が終わってもすぐに満額を支払わず、傷病手当金が利用できる1年6ヶ月までを支払削減期間として支払いを半額に抑えることで、保険料を抑えています。支払削減期間が終わったあとは満額支給します。
会社員や公務員にはこのタイプが向いています。通算1年6か月までは傷病手当金を受け取れるため、傷病手当金だけでは不足する分だけを保険で補えばよいからです。
なお、支払い対象外期間を60日よりも長く設定した就業不能保険が用意されている場合もあります。
保険期間の決め方
保険期間を長く設定するほど保障される期間は長くなりますが、そのぶん保険料が上昇します。保険期間は、子どもの教育費負担が終わるまで、住宅ローンの返済が終わるまでなど、家計負担が重い期間に限定すると、保険料負担の上昇を抑えられます。
対象外になるケース
就業不能保険では、入院中に限らず在宅療養中でも保障の対象としていますが、医師の指示を受けて在宅療養をしていることが重要です。その証明のために、公的医療保険制度の「在宅患者診療・指導料」が医療費の明細に含まれているか確認されることもあります。
在宅療養の細かな判断基準は保険会社ごとに異なりますが、自分で勝手に判断した在宅療養は就業不能保険の対象外となるので気をつけましょう。
また、精神疾患による療養を保障の対象に含むかどうかは保険会社によって異なります。保障の範囲についてもあらかじめ確認しておきましょう。
自営業や個人事業主の人が就業不能保険以外に検討しておきたい保険
自営業者や個人事業主が備えたいリスクは、働けないときだけではありません。死亡や病気・ケガについても備える必要があります。必要な保険の種類とその内容をお伝えします。
定期保険
あらかじめ定めた保険期間中に死亡・高度障害状態になると、死亡保険金または高度障害保険金が一時金として支払われます。掛け捨てタイプの保険で貯蓄性は期待できませんが、そのぶん保険料がお手頃になっています。
亡くなったあと、お葬式代やお墓の準備、自宅のメンテナンス、子どもの結婚資金など、まとまったお金が必要になることもあるでしょう。
事業継続のために、店舗や設備のメンテナンスが必要になることも考えられます。定期保険でまとまった死亡保障を準備しておくことも考えましょう。
医療保険
病気やケガの治療費への備えとして、医療保険にも加入しましょう。就業不能保険に入っていても、60日間は支払い対象外期間となりますが、医療保険があれば、その間も入院給付金や手術給付金などを受け取り、医療費負担を補えます。
自営業者・個人事業主は就業不能保険で収入減少に備えましょう
就業不能保険では、病気やケガの治療で働けない期間の収入減少に備えることができます。傷病手当金がない自営業者・個人事業主は、60日の支払い対象外期間が終わったら、すぐに満額の給付金を受け取れるタイプを選びましょう。
- ※ 当記事は著者個人の見解・意見によるものです。
- ※ 当記事の内容は作成日現在公表されている情報や統計データ等に基づき作成しており、将来予告なく変更されることがあります。
- ※ 当記事で書かれている保険の内容には、アクサのネット完結保険では取り扱いのない商品や手続きがございます。
- ※ アクサのネット完結保険の保険商品の詳細につきましては、重要事項説明書/ご契約のしおり・約款を必ずご覧ください。
- ※ 当記事を参考にご加入中の生命保険の見直し・解約をされる際には、以下3点にご留意ください。
- ① 一度解約した生命保険契約はもとには戻らないこと。
- ② 解約返戻金は解約するタイミングによって、払込保険料の合計額よりも少なくなる場合があること(解約返戻金がない保険商品もあります)。
- ③ 健康状態によっては新たに保険に加入できなかったり、加入できても保険料の増加や一部の保障が対象外になるなど特別条件付きの契約となる場合もあること。
- ※ 個別の税務等の詳細については税務署や税理士等、専門家にご確認ください。
ライター
氏家祥美(うじいえよしみ)
ファイナンシャルプランナー
ハートマネー代表
お茶の水女子大学大学院修了。
2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち
2010年よりFP事務所ハートマネー代表となる。
「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、
子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持つ。
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