保険お役立ちコラム
生命保険料控除の対象者とは?計算方法や手続き方法を解説
更新日:2023/12/13
生命保険料控除の「新制度」と「旧制度」の違いと、控除額の計算方法について確認しましょう。勤務先の年末調整や、税務署の確定申告で手続きする方法や、生命保険料控除証明書を紛失した場合についても解説します。
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2023年12月現在の内容です。税制改正により将来変更になる可能性があります。また、個別の税務の取扱等については所轄の税務署または税理士にご相談ください。
生命保険料控除とは
生命保険料控除は、1年間に払い込んだ生命保険料の金額によって、所得税と住民税の負担が軽減される制度です。所得税や住民税の負担が軽減できる効果があります。
生命保険料控除の対象者
生命保険料控除の対象者は以下の通りです。加入している保険の主契約・特約の種類によって、3つの控除に分かれます。
控除の種類 | 対象となる保障 | 保障名 |
---|---|---|
一般生命保険料控除 | 遺族のための保障 | 定期保険、終身保険、収入保障保険など |
介護医療保険料控除 | 医療や介護の保障 | 医療保険、がん保険、就業不能保険、介護保険など |
個人年金保険料控除 | 老後のための保障 | 個人年金保険料税制適格特約が付加された個人年金保険 |
生命保険料の控除額
生命保険料控除は、保険の契約時期によって計算方法が異なります。2012(平成24)年1月1日以後の契約は「新制度」、2011(平成23)年12月31日以前の契約は「旧制度」として計算します。
ただし、保険期間が5年に満たない保険などは、控除の対象にならない場合があります。
新制度の対象となる保険
図表2「新制度の対象となる保険」
一般生命保険料控除 | 所得税 | 40,000円 |
---|---|---|
住民税 | 28,000円 | |
介護医療保険料控除 | 所得税 | 40,000円 |
住民税 | 28,000円 | |
個人年金保険料控除 | 所得税 | 40,000円 |
住民税 | 28,000円 | |
全体の控除限度額 | 所得税 | 120,000円 |
住民税 | 70,000円 |
生命保険料控除は、2012年1月1日以降に締結した契約から新制度となり、長寿社会を迎えて、これまで以上に介護や医療への備えが重視されるようになったことから「介護医療保険料控除」が新設されました。
生命保険料控除の計算をするときには、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3つの分野に分けて、分野ごとに1年間で払った保険料から控除額を計算します。それぞれの控除額の上限は、所得税が40,000円、住民税が28,000円であり、3分野を合計した全体の控除限度額は所得税が120,000円、住民税が70,000円となっています。
旧制度の対象となる保険
図表3「旧制度の対象となる保険」
一般生命保険料控除 | 所得税 | 50,000円 |
---|---|---|
住民税 | 35,000円 | |
個人年金保険料控除 | 所得税 | 50,000円 |
住民税 | 35,000円 | |
全体の控除限度額 | 所得税 | 100,000円 |
住民税 | 70,000円 |
2011年12月31日以前に締結した契約は旧制度の対象になります。旧制度では2分野に分けるため、一般生命保険料控除には、遺族保障のほか医療・介護保障も含まれます。個人年金保険料控除は、新制度と同様です。
各分野の控除額の上限は、所得税が50,000円、住民税が35,000円で、2分野を合わせた控除限度額は、所得税が100,000円、住民税が70,000円となっています。
ただし、旧制度の対象になっている生命保険契約でも、2012年1月1日以降に契約の更新や転換(※1)、特約の中途付加(※2)をした場合には、以後の保険料(契約全体の保険料)が新制度の対象になります。
- ※1 保険の一部を転換した場合は、転換したあとの新しい契約は新制度の対象になりますが、存続している元の契約は旧制度の対象になります。
- ※2 「リビング・ニーズ特約」など保障がない特約や、身体の傷害のみに起因して保険金が支払われる特約については、中途付加をしても新制度の対象にはなりません。
- ※ 生命保険文化センター(税金に関するQ&A)
https://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/tax/tax_q16.html
新制度と旧制度の保険
新制度対象の保険と旧制度対象の保険に、両方加入している方もいるでしょう。その場合、控除額の計算方法には3つのパターンがあります。
(1)新契約にかかる控除額(図表1参照)
新契約の対象になる保険について、新制度の計算式を使って計算します。この場合、旧制度対象の保険については計算しません。
(2)旧契約にかかる控除額(図表2参照)
旧制度の対象になる保険について、旧制度の計算式を使って計算します。この場合、新制度対象の保険については計算しません。
旧制度では、一般生命保険料控除の枠が50,000円あり、新制度の40,000円よりも大きくなっています。
(3)新契約にかかる控除額+旧契約にかかる控除額
新制度の対象になる保険については新制度の計算式、旧制度の対象になる保険については旧制度の計算式で計算し、それぞれを合計します。
つまり、(1)と(2)の合計額になりますが、その上限額は40,000円で、旧制度の50,000円よりも少なくなっています。
- ※ 2023年12月現在の内容です。税制改正により将来変更になる可能性があります。また、個別の税務の取扱等については所轄の税務署または税理士にご相談ください。
生命保険料控除の計算方法(シミュレーション)
それでは、「新制度」と「旧制度」それぞれの場合について、生命保険料控除の計算を実際に見ていきましょう。
新制度対象の契約の場合
新制度の場合、3つの分野に分かれています。
- ・一般生命保険料控除
- ・介護医療保険料控除
- ・個人年金保険料控除
各分野は、図表4、図表5にあるように所得税40,000円、住民税28,000円を上限に控除枠があります。3つの枠を最大限活用した場合、所得から120,000円を差し引けることになります。
年間の支払保険料 | 控除額 |
---|---|
〜20,000円 | 支払い保険料の全額 |
20,001円〜40,000円 | 支払い保険料×1/2 + 10,000円 |
40,001円〜80,000円 | 支払い保険料×1/4 + 20,000円 |
80,001円 | 一律40,000円 |
年間の支払保険料 | 控除額 |
---|---|
〜12,000円 | 支払い保険料の全額 |
12,001円〜32,000円 | 支払い保険料×1/2 + 6,000円 |
32,001円〜56,000円 | 支払い保険料×1/4 + 14,000円 |
56,001円〜 | 一律28,000円 |
計算例
(例)1年間に支払った生命保険料(新契約対象)が以下の場合
● 一般生命保険料控除対象の保険:年間保険料50,000円
● 介護医療保険料控除対象の保険:年間保険料100,000円
● 個人年金保険料控除対象の保険:年間保険料60,000円
【所得税の控除額】
図表4より、このように計算できます。
一般生命保険料控除:50,000円×1/4+20,000円=32,500円
介護医療保険料控除:40,000円
個人年金保険料控除:60,000円×1/4+20,000円=35,000円
所得税の控除額合計:32,500円+40,000円+35,000円=107,500円
図表1より、新契約の所得税控除上限額120,000円の範囲内なので、所得税の控除額は107,500円となります。
【住民税の控除額】
図表5より、このように計算できます。
一般生命保険料控除:50,000円×1/4+14,000円=26,500円
介護医療保険料控除:28,000円
個人年金保険料控除:28,000円
住民税の控除額合計:26,500円+28,000円+28,000円=82,500円
図表2より、新契約の住民税控除上限額は70,000円なので、住民税の控除額は70,000円となります。
実際いくら税金が払い戻されるの?
計算例では、所得税の計算時に107,500円、住民税の計算時には70,000円が所得から差し引けることになりました。ただし、この金額が払い戻されるわけではありません。
払い戻される税額は、控除額に所得税率(5~45%)をかけた金額です。ここでは、所得税率が15%の方を例に計算してみましょう。なお、住民税は一律10%として計算します。
- ● 所得税:107,500円×15%=16,125円。納めた所得税から16,125円が返ってきます。
- ● 住民税:70,000円×10%=7,000円。納めた住民税から7,000円が戻ってきます。
このケースでは、生命保険料控除の手続きをすることで、所得税と住民税をあわせて23,125円が還付されることがわかりました。
旧制度対象の契約の場合
旧契約の場合、
- ・一般生命保険料控除
- ・個人年金保険料控除
の2つの分野に分かれています。各分野にはそれぞれ、所得税50,000円、住民税35,000円の控除枠があります。
具体的な計算式は図表6と図表7のようになります。
年間の支払保険料 | 控除額 |
---|---|
〜25,000円 | 支払い保険料の全額 |
25,001円〜50,000円 | 支払い保険料×1/2 + 12,500円 |
50,001円〜100,000円 | 支払い保険料×1/4 + 25,000円 |
100,001円〜 | 一律50,000円 |
年間の支払保険料 | 控除額 |
---|---|
〜15,000円 | 支払い保険料の全額 |
15,001円〜40,000円 | 支払い保険料×1/2 + 7,500円 |
40,001円〜70,000円 | 支払い保険料×1/4 + 17,500円 |
70,001円〜 | 一律35,000円 |
計算例
図表6にあるように、例えば、一般生命保険料の枠で年間100,000円超の保険料を払った方は、所得から50,000円を差し引けます。同様に、個人年金保険料の枠でも100,000円超を払っていれば、さらに50,000円を差し引けます。
そのため、2つの枠を合わせると、所得税の計算時には所得から100,000円を差し引けることになります。
(例)1年間に支払った生命保険料(旧契約対象の契約)が以下の場合
● 一般生命保険料控除対象の保険:年間保険料150,000円
● 個人年金保険料控除対象の保険:年間保険料 60,000円
【所得税の控除額】
図表6より、このように計算できます。
一般生命保険料控除:50,000円
個人年金保険料控除:60,000円×1/4+25,000円=40,000円
所得税の控除額合計:50,000円+40,000円=90,000円
図表3より、旧契約の所得税控除上限額100,000円の範囲内に収まるので、この場合、所得税の控除額は90,000円になります。
【住民税の控除額】
図表7より、このように計算できます。
一般生命保険料控除:35,000円
個人年金保険料控除:60,000円×1/4+17,500円=32,500円
住民税の控除額合計:35,000円+32,500円=67,500円
図表3より、旧契約の住民税控除上限額70,000円の範囲内に収まるため、住民税の控除額は67,500円となります。
生命保険料控除の手続き方法
生命保険会社から10月頃に、その年に支払った保険料額を証明する「生命保険料控除証明書」が届いたら、生命保険料控除を受ける手続きを行いましょう。働き方によって手続き方法が異なります。
給与所得者の場合
会社員や公務員など給与所得者として働いている方は、勤務先の「年末調整」で手続きをします。勤務先から渡される年末調整の書類に、「給与所得者の保険料控除申告書」があります。生命保険会社から届いた「生命保険料控除証明書」を見ながら、記入していきましょう。
申告書の「生命保険料控除」の欄をご覧ください。「一般の生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」と3分野に分けて書けるようになっています。加入中の保険から各分野に該当するものを選び、それぞれ保険会社の名称、保険等の種類、契約者名などを記入します。
続いて、書類の下部にある計算式を参考に、新契約(新保険料等)、旧契約(旧保険料等)に注意しながら、金額を記入します。
保険料控除申告書の記入が終わったら、生命保険料控除証明書を添えて勤務先に提出しましょう。なお、旧契約については、年間保険料が9,000円以下の保険の控除証明書は添付しなくていいことになっています。
- ※ 出典 国税庁「令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/r5bun_04.pdf
自営業者の場合
自営業者は、翌年の2月16日~3月15日の所得税の申告時期に、確定申告書類に「生命保険料控除証明書」を添付して申告します。
e-taxで申告をする方は、証明書を添付しなくて良いことになっていますが、5年間は手元に保険しておきましょう。もしくは、証明書データの電子発行を受けた場合には、データで送信もできます。
生命保険料控除をする際の注意点
生命保険料控除には、いくつかの注意点があります。制度を正しく理解して、控除のメリットを最大限に活用しましょう。
申告できる金額には上限がある
生命保険料控除の枠は、新契約は3つ、旧契約は2つの枠に分かれており、それぞれ上限額が決まっています。同じ枠内の保険に上限を超える保険料を支払っても、控除額は増えません。複数の枠を上手に活用しましょう。
また、保険期間が5年に満たない保険など、控除の対象外になる保険があるため注意しましょう。
申告漏れがないようにする
勤務先の年末調整で申告し忘れた場合には、自分で確定申告をしましょう。通常、確定申告は翌年の2月16日から3月15日の間に行いますが、生命保険料控除のように税金の還付申告だけの場合には、翌年1月1日から最長5年間、申告できます。
生命保険料控除証明書をなくしたらすみやかに保険会社に連絡する
生命保険料控除証明書は、毎年10月頃に生命保険会社から郵送で届きます。書類は必ず保管しておき、忘れずに申告しましょう。控除証明書を紛失した場合も、生命保険会社に連絡をすると再発行できます。
まとめ
生命保険料控除は、払った保険料に応じて、所得税や住民税の負担が軽減できる制度です。加入時期によって「新制度」と「旧制度」に分かれ、控除額の計算方法が異なります。生命保険料控除の手続きは、勤務先の年末調整、もしくは、自分で確定申告を行います。手続きを忘れていた方も、あとから確定申告をすれば5年間は税金の払い戻しを受けられます。
- ※ 当記事は著者個人の見解・意見によるものです。
- ※ 当記事の内容は作成日現在公表されている情報や統計データ等に基づき作成しており、将来予告なく変更されることがあります。
- ※ 当記事で書かれている保険の内容には、アクサのネット完結保険では取り扱いのない商品や手続きがございます。
- ※ アクサのネット完結保険の保険商品の詳細につきましては、重要事項説明書/ご契約のしおり・約款を必ずご覧ください。
- ※ 当記事を参考にご加入中の生命保険の見直し・解約をされる際には、以下3点にご留意ください。
- ① 一度解約した生命保険契約はもとには戻らないこと。
- ② 解約返戻金は解約するタイミングによって、払込保険料の合計額よりも少なくなる場合があること(解約返戻金がない保険商品もあります)。
- ③ 健康状態によっては新たに保険に加入できなかったり、加入できても保険料の増加や一部の保障が対象外になるなど特別条件付きの契約となる場合もあること。
- ※ 個別の税務等の詳細については税務署や税理士等、専門家にご確認ください。
ライター
氏家祥美(うじいえよしみ)
ファイナンシャルプランナー
ハートマネー代表
お茶の水女子大学大学院修了。
2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち
2010年よりFP事務所ハートマネー代表となる。
「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、
子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持つ。
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