保険お役立ちコラム

終身保険(死亡保険)を一括で支払うことのメリットとは?

公開日:2020/06/19

※本記事についてのご注意

終身保険は、一生涯の死亡保障が確保できる、貯蓄性のある保険です。同じ保険でも、保険料の支払い方法を選ぶことで、負担する保険料が異なります。

終身保険(死亡保険)の支払い方法

保険料の支払い方法と回数

終身保険の保険料の支払いは、銀行口座等からの引き落としや、クレジットカード払いなどが用意されています。保険会社によって選べる支払方法は異なります。

終身保険は、一生涯の死亡保障を備えられる保険ですが、保険料の支払いについては、60歳、65歳などの一定年齢までに支払いを終える「歳満了」と、加入時から10年間、20年間など、一定年数で支払いを終える「年満了」、一生涯かけて保険料を支払う「終身払い」があります。

何歳まで、何年間で保険料の支払いを終えるかを決めた後には、保険料の支払い回数を決めていきます。保険料の支払いには、毎月支払う「月払い」以外にも選択できる場合があり、基本的にまとめて支払うほどひと月当たりの保険料が安くなります。

図表1「保険料の支払い方法」

支払方法 説明
月払い 毎月支払う
半年払い 6ヶ月分ずつ、年に2回支払う
年払い 年に1回支払う
全期前納払い 全保険期間の保険料を生命保険会社に一括で預ける方式。預けたお金は少しずつ保険料に充当されていく
一時払い 保険契約時に、全期間分の保険料を一度に支払う方式

1年間の支払総額を比較すると、毎月支払う「月払い」よりも、6ヶ月分ずつ年に2回支払う「半年払い」の方が1年あたりの総額が安くなります。また、年に1回まとめて支払う「年払い」は、月払いや半年払いよりも、1年あたりの総額が安くなります。ただし、半年払いや年払いを扱っていない保険会社もあるので、事前に保険会社に確認しましょう。

途中で解約する場合、半年払いや年払いを選んだ人は注意が必要です。すでに支払った保険料については、未経過期間があっても払戻しができません。年払いで保険料を支払った2か月後に保険を解約する場合でも、残り10ヶ月分の保険料については戻ってこないため、保険料の支払い方法や解約には計画性が必要です。

そのほか、保険料を契約時にまとめて納める方法に、「全期前納払い」と「一時払い」があります。保険料をまとめて納める分、月払いや半年払いなどに比べると保険料負担が軽減されています。どちらもまとまったお金がすでにある人に向いた支払方法ですが、相違点もあります。違いを理解して選びましょう。

全期前納払いとは

全保険期間の保険料を、生命保険会社に一括で預ける方式を「全期前納払い」といいます。預けた保険料は、保険会社によって管理され、その中から通常の月払いや年払いと同じように、少しずつ保険料に充当されていきます。

全期前納払いの特徴

全期前納払いでは、保険会社に預けたお金のなかから、少しずつ保険料が支払われていくため、加入者は生命保険料控除を毎年受けることができます。また、万が一、被保険者が亡くなった時や、保険契約を解約した時に、まだ保険料に充当されていないお金が残っていた場合には、死亡保険金や解約返戻金に加えて、その残金が戻ってきます。

一時払いとは

契約時に保険料をまとめて支払う方法です。こちらは全期前納払いと違って、全保険期間分の保険料を一度にまとめて支払います。

一時払いの特徴

一時払いは、全期前納払いを含めた他の支払い方法よりも、保険料の支払総額が低く抑えられます。ただし、一時払いの場合、生命保険料控除は初回だけしか利用できません。また、被保険者が亡くなった時や、保険を中途解約した場合でも、すでに保険料は全額保険料として支払われているので、残高は戻ってきません。被保険者が亡くなった場合には死亡保険金、中途解約した場合には解約返戻金だけを受け取ることになります。

一時払い終身保険とは

一時払い終身保険は、保険料を一時払いすることを前提に販売されている終身保険です。保障が一生涯続く終身保険の保険料を終身払いすることで、保険料の支払総額を少なく抑えられます。そのため、相続対策や老後の資産運用としてよく利用されます。

相続対策としての活用

一時払い生命保険は、相続対策として利用されます。相続対策としての活用を考えるためには、生命保険金の非課税限度額「500万円×法定相続人数」と、相続税の基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人数」を知っておきましょう。具体例を見ながら、一緒に考えていきます。

計算例
法定相続人:3人(妻と子ども2人)
相続財産:6,000万円(生命保険金が3,000万円+その他相続財産3,000万円)

この場合、
生命保険金の非課税限度額:500万円×3人=1,500万円

生命保険金3,000万円のうち、1,500万円が相続税の課税対象外となるため、残りの1,500万円分の生命保険だけを相続税の対象に加えればよくなります。
生命保険金の控除分を差し引いた相続財産は、
生命保険金の残り1,500万円+その他相続財産3,000万円=4,500万円

続いて、相続税の基礎控除を計算します。
相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×3人=4,800万円

相続財産が、相続財産の非課税枠の範囲内に収まるため、今回のケースでは、相続税がかからないことがわかります。

もし、全く生命保険を使わずに現金等で6,000万円の相続をした場合、相続税の基礎控除4,800万円を超過した1,200万円に対して、相続税が課税されたことになります。この例のように、相続税の非課税枠を超えて相続が行われるケースでは、生命保険の非課税枠を活用することで、相続税の軽減効果が期待できます。

資産運用目的の活用

終身保険のように貯蓄性がある生命保険の場合、加入時の予定利率でその後も運用が続きます。(※1)そのため、貯蓄性に優れた一時払い終身保険は、かつては保険会社のほか、銀行や証券会社等でも積極的に販売されていました。その後、マイナス金利の影響で、日本円建ての一時払い終身保険を売り止めとする保険会社が増えるにつれて、今度は外貨建ての一時払い終身保険が積極的に販売されるようになりました。

  • ※1 積立利率変動型終身保険など予定利率が変動する終身保険もあります。

外貨建ての一時払い終身保険は、米ドルや豪ドルなどの外貨で運用される一時払いの終身保険です。予定利率が日本円建てのものより高いところに魅力があります。

ただし、外貨建てならではのリスクもあります。もともと一時払い終身保険は、保険料を一度にまとめて支払うものですが、これが外貨建てとなると、契約時にまとめて外貨に換金する必要があります。購入時よりも円安のタイミングで解約すれば、運用益に加えて為替差益を得られますが、円高のタイミングで解約すれば、為替差損を負うことになります。

また、被保険者が亡くなった時に受け取る死亡保険金も為替の影響を受けます。死亡時に契約時よりも円安になっていれば、より多くの死亡保険金を受け取ることができますが、もしも死亡時に大きく円高になっていれば、当初想定していたよりも死亡保険金が減ってしまう可能性があります。

契約者貸付でお金を借りる

終身保険のように、貯蓄性のある生命保険には、解約返戻金の一定範囲内でお金を借りられる「契約者貸付」という制度があります。急に資金が必要になった時に備えて知っておきたい制度です。

お金が必要になった時、終身保険を解約すれば、解約返戻金は支払われますが、死亡保障は解約した時点で終了します。保険は一度解約すると、同じ保険料、同じ予定利率で加入することは難しいものですし、健康状態によっては入りなおせない可能性があります。

それに対して、契約者貸付を利用すれば、自由に使えるお金を手にしながらも、保障を維持することができます。あくまでも借入なので、利息を支払う必要はありますが、保障を継続できるメリットは大きいでしょう。なお、一般的に、予定利率が高い保険から貸付を受ける場合、貸付利率も高くなります。

まとまった資金がある人が、終身保険に加入するときには、保険料をまとめて支払うと保険料総額を減らせます。保険会社にどのような支払方法を選べるか確認してみましょう。可能であれば、生命保険料控除を毎年受けたい人は「全期前納払い」を、保険料総額をより減らしたい人は「一時払い」を選ぶといいでしょう。

ライター

氏家祥美(うじいえよしみ)

ファイナンシャルプランナー

ハートマネー代表

お茶の水女子大学大学院修了。
2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち
2010年よりFP事務所ハートマネー代表となる。
「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、
子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持つ。

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