保険お役立ちコラム
年末調整の手続きでは、保険料控除申告書を会社に提出します。この書類で受けられる控除には、生命保険料控除がありますが、実はほかにもいくつかの控除が受けられます。それぞれの控除の特徴や控除額の計算方法、生命保険料控除を受ける際の記入方法についても解説します。
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保険料控除とは
生命保険料控除は、1年間に支払った保険料額に応じて所得税・住民税の負担を軽減できる制度です。会社員は、この生命保険料控除の手続きを、勤務先の「年末調整」を通じて行えます。
「年末調整」は、年末の給与で税額を調整する手続きです。会社員の給与やボーナスからは、その都度、概算の税額が差し引かれています。ただし、それはあくまでも概算額のため、年収が確定する年末の給与にあわせて年末調整を行い、扶養家族の人数や1年間に支払った各種保険料などを申告することで、最終的な税額を決定して税の過不足を調整します。給与天引きした税金が実際よりも多ければ納めすぎた分が払い戻され、不足分があれば追加で徴収します。
毎年11月頃になると、勤務先から従業員に年末調整の書類が配られます。そのうちの1枚が「給与所得者の保険料控除申告書」です。この書類では、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除の手続きが行えます。
なお、生命保険料控除の手続きには、「生命保険料控除証明書」が必要です。毎年10月頃になると、保険会社から契約者宛に郵送で届くので、年末調整が始まるまで大切に保管しておきましょう。
保険料控除申告書の書き方と要点
保険料控除証明書の概要
会社から配布される年末調整書類の中の1枚に、「給与所得者の保険料控除申告書」があります。上段には、氏名や住所などを記入して、捺印する欄があります。
図表1「給与所得者の保険料控除申告書」
- ※ 参照 国税庁「給与所得者の保険料控除の申告」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/r2bun_06.pdf
生命保険料控除の概要
「生命保険料控除」は、下段の左側に位置します。大きく3つに分かれていて、上から、「一般の生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の欄があります。それぞれの内容については、図表2「3つの生命保険料控除」をご覧ください。
旧制度 | 新制度 | 該当する保険料 |
一般の生命保険料控除 | 一般生命保険料控除 | 生存または死亡にもとづいて一定額の保険金、その他給付金が支払われる契約の部分の保険料 |
介護医療保険料控除 | 入院・通院等に伴う給付金部分の保険料 | |
個人年金保険料控除 | 個人年金保険料税制適格特約の付加された個人年金保険契約等の保険料 |
- ※ 参照 生命保険文化センター「知っておきたい生命保険と税金の知識」p6
なお、現在の制度は、図表2の「新制度」に該当しますが、平成23年12月31日以前に契約した保険は「旧制度」に該当します。旧制度では、一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の2つだけに区分されていて、介護医療保険料控除はまだありませんでした。
生命保険会社から届く「生命保険料控除証明書」には、加入している保険が、新契約もしくは旧契約の、どの控除に該当するかが書かれています。最初にその点を確認してから、該当する欄を選んで記入しましょう。
「生命保険料控除」の欄の書き方
生命保険料控除証明書を見ながら、内容を転記していきましょう。左側からこのような項目が並んでいます。
(1)保険会社の名称
(例)アクサダイレクト生命保険など
(2)保険等の種類
(例)定期保険、がん保険、医療保険など
(3)保険期間または年金支払い期間
(例)終身、10年、1年など
(4)契約者の氏名
保険料を支払っている人の名称を記入します
(5)保険金等の受取人の氏名と続柄
保険金受取人の名前と、保険の契約者から見た関係性を記入します。
(6)新・旧の区分
平成23年12月31日以前の契約なら「旧」契約、平成24年1月1日以降の契約なら「新」契約に該当します。生命保険料控除証明書を見ると、どちらに該当するか書かれています。
(7)あなたが本年中に支払った保険料等の金額
支払った保険料を記入する欄です。生命保険料控除申告書に、9月末までの保険料払込額と、12月末までの払込み予定額が書かれている場合、「払込み予定額」を書くことができます。
転記が終わったら、控除額を計算していきます。新制度の場合、「一般の生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」それぞれについて、保険料を8万円超支払った場合に、最大4万円の控除が認められます。3つの枠を最大限利用すると、4万円×3枠=12万円が所得から控除できます。
旧制度の場合には、「一般の生命保険料」「個人年金保険料」の2区分について、保険料を10万円超支払った場合に、最大5万円の控除が認められます。2つの枠を最大限利用すると、5万円×2枠=10万円が所得から控除できます。
新制度・旧制度の生命保険料控除の仕組みと詳細や、節税効果の計算方法は、こちらの関連コラムをご覧ください
生命保険料控除の関連コラム:確認しておきたい生命保険料控除の計算方法
地震保険料控除の欄の書き方
「地震保険料控除」は、損害保険会社で地震保険に加入している人が対象です。地震保険は火災保険加入者が利用できる保険ですが、控除が受けられるのは地震保険だけとなります。火災保険は控除の対象となりません。
控除額 | |
---|---|
所得税 | 払込保険料全額(最大5万円) |
住民税 | 年間払込保険料×1/2 (最大2万5000円) |
こちらの手続きも生命保険料控除と似ています。損害保険会社が発行した「地震保険料控除証明書」を申告書に添付して提出します。複数年契約をしていて、数年分をまとめて払った場合にも、1年分の保険料に割り戻して、毎年控除を受けられます。詳しくは加入中の地震保険の窓口となっている損害保険会社にお問い合わせ下さい。
社会保険料控除
会社員の場合、給与から天引きされている健康保険料や厚生年金保険料は会社で把握しているため、ほとんどの場合、この欄を記入することはありません。記入するのは、会社を通さずに支払った社会保険料がある場合です。例えば、転職期間中に自分で国民年金保険料や国民健康保険料を支払っていた場合などが該当します。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者が任意で加入する退職金制度です。そのため、小規模企業共済自体はあまり会社員とは関係ありません。ただし、会社員でも、iDeCo(イデコ/小規模企業共済)に加入している人は、年末調整の際に、この「小規模企業共済等掛け金控除」について申告することになっています。
iDeCoは個人が掛け金を拠出する年金制度です。会社員の場合、図表4のように、企業年金の有無などによって、個人型に拠出できる金額の上限が異なります。決められた上限内であれば、拠出した全額を所得から控除でき、税額を減らせます。
iDeCo加入の可否 | 拠出上限額 | |
会社に企業年金がない会社員 | 可 | 23,000円 |
企業型DCに加入している会社員 | 勤務先が認めた場合に限り可 | 20,000円 |
DBと企業型DCに加入する会社員 | 勤務先が認めた場合に限り可 | 12,000円 |
会社にDBのみに加入する会社員 | 可 | 12,000円 |
- ※ DBは確定給付企業年金、厚生年金基金のこと
- ※ DCは確定拠出年金のこと
- ※ 参考 iDeCo公式サイト
https://www.ideco-koushiki.jp/start/
保険料控除申告書が不要な人
会社で年末調整の書類が配られた場合でも、「保険料控除申告書」で申告すべき内容にまったく該当しなければ、この書類を提出する必要はありません。具体的には、生命保険に加入していない人、地震保険に加入していない人、勤務先以外で社会保険料を払っていない人、iDeCoに加入していない人などが挙げられます。これらすべてに該当すれば、保険料控除申告書を提出する必要はありません。
生命保険料申告をした場合としなかった場合の税金の差は?
年末調整で生命保険料控除を申告することで、その年の所得が少なく修正されるため、年間の所得税額も減額されます。そのため、納めすぎた所得税が戻ってくることになります。例えば、12万円が所得から控除されると、所得税率が20%の会社員の場合、12万円×20%=24,000円が還付されることになります。
生命保険料控除の効果は、これだけでは終わりません。住民税は前年の所得をもとに計算されて、翌年の6月から支払います。年末調整で生命保険料控除を申告することにより、翌年の住民税額も安くなることになります。
保険料控除申告に関するよくある質問
保険料控除申告についてよくある質問にいくつかお答えしていきます。
勤務先の年末調整に間に合わなかったら?
勤務先の年末調整期日に間に合わず、受け付けてもらえなかった場合には、個人で確定申告を行いましょう。翌年の2月16日から3月15日が確定申告の期日になります。確定申告書類を作成して、必要な添付書類を添えて、最寄りの税務署に提出します。確定申告の詳しい手続きの方法や、確定申告書類のダウンロードは、国税庁のホームページから行えます。
- ※ 確定申告の受付期間は土日に当たる場合は期間が変わることがありますので、確定申告する際には国税庁のホームページでご確認ください。
国税庁:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei.htm
保険料控除申告書を紛失したら?
会社から配布された保険料控除申告書を紛失することや、書き損じてしまうこともあるでしょう。勤務先で再びもらうのが難しい場合には、国税庁のホームページからもダウンロードできます。
- ※ 国税庁「手続名 給与所得者の保険料控除の申告」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_05.htm
転職をした場合、手続き方法は変わる?
年の途中で転職した場合には、年末調整書類と一緒に、前の会社でもらった源泉徴収票を提出しましょう。前の会社からもらっていた給与、そこから支払った税額や社会保険料の金額についても、この1枚に記入されています。
保険料控除申告書の「社会保険料控除」の欄には、前職で支払っていた社会保険料の金額を記入します。また、以前の会社と現在の会社のほかに、年内に自分で支払っていた社会保険料(国民年金保険料、国民健康保険料等)がある場合には、その金額も記入します。
生命保険料、地震保険料、iDeCoを利用している人も、年末調整では保険料控除申告書で忘れずに申告を
保険料控除申告書では、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛け金控除の申告ができます。iDeCo(個人版確定拠出年金)の掛け金は小規模企業共済等掛け金控除の対象です。いずれも支払った保険料額の証明書類が届いたら大切に保管し、申告書に添付して提出しましょう。
- ※ 当記事は著者個人の見解・意見によるものです。
- ※ 当記事の内容は作成日現在公表されている情報や統計データ等に基づき作成しており、将来予告なく変更されることがあります。
- ※ 当記事で書かれている保険の内容には、アクサのネット完結保険では取り扱いのない商品や手続きがございます。
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- ※ 当記事を参考にご加入中の生命保険の見直し・解約をされる際には、以下3点にご留意ください。
- ① 一度解約した生命保険契約はもとには戻らないこと。
- ② 解約返戻金は解約するタイミングによって、払込保険料の合計額よりも少なくなる場合があること(解約返戻金がない保険商品もあります)。
- ③ 健康状態によっては新たに保険に加入できなかったり、加入できても保険料の増加や一部の保障が対象外になるなど特別条件付きの契約となる場合もあること。
- ※ 個別の税務等の詳細については税務署や税理士等、専門家にご確認ください。
ライター
氏家祥美(うじいえよしみ)
ファイナンシャルプランナー
ハートマネー代表
お茶の水女子大学大学院修了。
2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち
2010年よりFP事務所ハートマネー代表となる。
「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、
子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持つ。
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