保険お役立ちコラム

妊娠・出産でも医療保険に加入できる?使える公的制度・助成金も解説

更新日:2024/11/13

※本記事についてのご注意

妊娠や出産にかかるお金の平均データと、妊娠や出産をサポートする公的制度について解説します。体が大きく変化する妊娠中や出産時には、母体や胎児にとってリスクが高まります。妊娠や出産を前にした女性における医療保険の必要性について考えます。

厚生労働省の調査によると、令和2年度の出産費用の全国平均は46万7,000円。公的病院に限った場合でも45万2,000円がかかっています。そして、出産費用は年間平均1%前後のペースで上昇し続けています。

普通分娩による出産は公的医療保険の対象外

妊娠・出産は病気ではないという考えから、妊娠中の健診費用や普通分娩による出産には公的医療保険が適用されません。後述する出産育児一時金を出産費用が上回った場合、その差額は全額自己負担となります。

妊婦健診費用には自治体の助成金がある

妊娠中や出産には、本人の経済的な負担を軽減するために、さまざまな公的制度があります。妊娠・出産に使える公的制度については、後述します。

まずは、妊婦健診にかかるお金と自治体からの助成について見ていきましょう。

妊婦健診は妊娠中の母体の変化や胎児の成長を確認するため、妊娠期間中に定期的に受ける健康診査のことです。妊娠期間中に必要とされる妊婦健診回数は、以下のようなペースで、合計14回程度が目安となっています(※1)。

  • ・妊娠初期から妊娠23週まで4週間に1回
  • ・妊娠24週から妊娠35週まで2週間に1回
  • ・妊娠36週から出産まで1週間に1回

妊娠がわかって自治体の窓口に母子手帳を受け取りに行く際に、母子手帳と一緒に妊婦健診の受診券をもらう形式が多くなっています。

妊婦健診は公的医療保険の対象外のため、医療機関ごとにかかる費用が異なります。医療機関では、自治体からの助成券を利用して、それでも差額が発生する場合には差額分を自己負担することになります。

厚生労働省によると令和4年時点では、全市区町村で妊婦健診費用が14回分以上助成されています。その公的負担金額は、全国平均で妊婦一人当たり10万7,792円となっています(※2)。

普段はとても健康な方でも、妊娠中は何が起こるかわかりません。順調に過ごせる方ばかりではないということを知っておきましょう。妊娠期間中に医療的措置が必要になるケースとしては、下記のようなものがあります。

つわりの悪化

妊娠初期にほとんどの妊婦さんが経験します。軽く終わる方がいる一方で、吐き気や嘔吐の症状が重く、食事をほとんどとれない期間が長期化する方もいて、重度の場合には入院が必要になることもあります。

切迫流産

流産の一歩手前という状態です。妊娠22週未満で、赤ちゃんが子宮内に留まっていられない予兆が見られると、安静にして自宅で過ごしたり、入院して治療を受けたりしながら、赤ちゃんがなるべく子宮の中で成長できるように努めます。

卵管流産

子宮外妊娠のうち、受精卵が子宮に着床し、その後、流産に至ることをいいます。子宮外妊娠は、その多くが卵管で起こります。

切迫早産

早産の一歩手前という状態です。妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を早産といいますが、この時期は赤ちゃんにとって1日でも長く子宮内に留まって成長することがとても重要です。早産とならないように、自宅で安静に過ごしたり、入院して治療を受けたりします。

子宮外妊娠

受精卵が、胎児が育つ部屋となる子宮以外の場所に着床することをいいます。子宮は胎児の生育に合わせて伸びて空間が広がりますが、それ以外の場所では胎児が留まることができないため、妊娠を継続できなくなります。自然に母体から排出されるのを待つか、手術や薬物で治療を行うことで次回以降の妊娠に備えます。

妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)

妊娠時に高血圧を発症した場合を、妊娠高血圧症候群といいます。以前は高血圧とともに蛋白尿、むくみなどの症状も現れることから、以前は妊娠中毒症という名前で知られていました。現在は、妊娠高血圧症候群と名称が変わっています。

自宅で安静に過ごしたり、入院したりして治療をします。

妊娠糖尿病

普段、糖尿病の症状がない方が、妊娠中に初めて糖代謝異常が見つかると、妊娠糖尿病と診断されます。母体が高血糖になると、赤ちゃんも高血糖となって合併症を起こす可能性が高まるため、食事療法やインスリン注射などで血糖値を管理していきます。

食事や運動の指導を受けて自宅で過ごすこともありますが、入院して治療をすることもあります。

異常分娩(帝王切開など)

異常分娩とは、普通分娩以外の何らかの医療行為を伴う分娩をいいます。例えば、帝王切開手術や吸引分娩などがあります。

帝王切開手術は、子宮にメスを入れる外科的手術で直接赤ちゃんを取り出す方法です。厚生労働省の平成29年のデータによると、帝王切開手術による出産は、一般病院の場合は全分娩件数に対して25.8%、一般診療所の場合は全分娩件数に対して14%でした。

帝王切開による出産は、手術費用がかかりますが、公的医療保険が利用できます。

ただし、入院中は個室や少人数部屋の利用となって全額自己負担となる差額ベッド代を支払うことが多くなり、入院日数も普通分娩より長くなる傾向があるため、医療費の負担が大きくなると思っておきましょう。

妊娠・産後うつ

妊娠中や産後に起こるうつ症状をいいます。妊娠中はホルモン変化がおきやすく、母体にも大きな変化が起こり、大きなストレスを抱えます。

産後は睡眠になりやすく、慣れない子育てにプレッシャーを感じやすくなることから、気分が落ち込んで自分を責めたり、自己評価が低下したりしやすくなります。つい我慢をしがちですが、早めに治療やサポートを受けることが大切です。

赤ちゃんの治療や入院

低体重での出産や先天的な疾患を抱えているような場合には、赤ちゃんの治療のために、出産後そのまま赤ちゃんの入院治療が始まる場合があります。

NICUとは、新生児集中治療室のことで、新生児を適切な環境で集中的に治療する専門施設のことです。NICUの治療費は公的医療保険の適用になるほか、未熟児療養医療制度による助成もあります。

冒頭でご紹介した妊婦健診の助成のほかにも、妊娠中や出産にかかるお金をサポートする公的制度はいくつもあります。

出産育児一時金

出産費用の自己負担を軽減するための制度で、妻の加入する公的医療保険もしくは夫が加入する公的医療保険のいずれか一方から、子ども一人につき50万円が支給されます。

ただし、産科医療補償制度の対象外となる医療機関での出産や、妊娠週数22週未満で出産した場合には、48万8,000円となります。

もともとは出産費用の全額を一度自分で病院に支払ってから、後日申請をして出産育児一時金を受け取るという形ですが、出産育児一時金が直接病院に支払われる直接支払制度の利用を申請しておけば、50万円を超過した金額だけを病院へ支払えばよく、立替払いの必要がなくなります。

また、出産費用が50万円かからなかった場合には、後日請求すれば、差額を受け取ることができます。詳しくは加入している健康保険に問い合わせましょう。

  • ※ 直接支払制度が利用可能かどうかは、出産予定の医療機関等にご確認ください。

出産手当金

出産手当金は出産のために取得する産前産後休暇中に、妊婦本人が所属する公的医療保険から支払われるお金です。会社員や公務員等が加入する協会けんぽや健康保険組合の制度で、国民健康保険に加入する方や、配偶者に扶養されている方は受け取れません。

支給される金額や基準となる日数は以下のとおりです。

<支給される金額>
●休暇前12ヶ月間の平均給与の3分の2が目安

<基準となる日数>
●出産日以前の42日間
●出産後の翌日から56日間

なお、予定日よりも出産日が遅くなった場合や多胎妊娠の場合には、日数が延長されます。

金額の詳しい計算方法や、支給日数の詳細については、こちらが参考になります。

傷病手当金

傷病手当金を受け取っている方が出産手当金の対象となった場合には、重複分については出産手当金が優先されます。

つまり、出産手当金の金額が傷病手当金と同額もしくは同額以上であれば、出産手当金だけを受け取れます。傷病手当金のほうが高額になった場合には、出産手当金を受け取ったうえで、差額分だけを傷病手当金から受け取ります。

高額療養費制度

1ヶ月(月初から末日まで)にかかった医療費の自己負担額が、所得や年齢によって決められた上限金額を超えた場合に申請をすると、その超過分が後日払い戻される制度です。

例えば、70歳未満の方の場合、5段階中3番目にあたる区分(標準報酬月額が28〜50万円)の方の場合、自己負担の上限金額は「8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%」となります。

また、「限度額適用認定証」をあらかじめ公的医療保険の窓口で入手して医療機関に提示しておくと、自己負担限度額を限度に支払えばよくなるため、立替払いが不要になります。

出産費貸付制度

出産費用が必要な方に、出産育児一時金を受け取るまでの間、無利子で出産費用の貸付をする制度です。協会けんぽの場合、出産育児一時金の8割が上限です。国民健康保険の場合、制度の有無や詳細は自治体によって異なります。

医療費控除

1年間(1月〜12月)にかかった医療費が10万円もしくは年間所得が200万円以下の場合に、所得金額の5%を超えた場合に確定申告をすると、かかった医療費の一部が所得から差し引かれて所得税の負担を軽減できる制度です。本人と同一生計の家族分の医療費も合わせて申告できます。

妊娠・出産費用の場合、妊婦健診の自己負担分、出産費用、公共交通機関やタクシーで通院した交通費なども医療費として申告できます。

ただし、公的医療保険からの出産育児一時金や高額療養費、民間医療保険から受け取った入院給付金や手術給付金等は、その妊娠・出産にかかった費用から差し引いて申告します。

妊娠・出産は病気ではないというものの、母体が大きく変化する時期です。そのため、母体にかかる負担も大きくなり、それに伴い入院や手術を受けるリスクが大きくなります。

公的制度だけでは不足する保障を補うために、あらかじめ民間保険に加入して備えておきましょう。

条件付きでの加入となることが多い

妊娠すると母体のリスクが高まることから、妊娠が分かってからでは保険に入りにくくなります。

妊娠中の場合、医療保険に加入できたとしても特定部位不担保といった条件付きでの加入となることが多くなり、いま現在の妊娠に関する病気が一定期間保障の対象から外れる可能性があります。

つまり、事故によるケガや、妊娠に無関係の病気については医療保障を受けられますが、例えば切迫流産や切迫早産、帝王切開手術などは保障の対象から外れることになります。

どこまでを保障の対象とするのかは、各社の医療保険によって異なります。妊娠中でも加入できるかどうかを確認したうえで、保障の範囲を約款などで詳しく確認しましょう。

妊娠・出産中にトラブルがあると医療保険に入りにくくなることも

保険に未加入のまま妊娠した方が、医療保険の加入を出産後まで先送りした場合には、どうなるでしょうか。この場合、何のトラブルもなく妊娠・出産できた場合には、出産後に医療保険の契約をしても特に影響はありません。

しかし、妊娠中のトラブルによる入院や、帝王切開などの異常分娩があった場合には、医療保険の告知事項に当てはまります。その場合、特定部位不担保や保険料の割り増しなど条件付きでの加入になる可能性が高まるほか、場合によっては加入できなくなることもあり得ます。

女性疾病特約も検討する

妊娠・出産のことを想定して医療保険に加入するのであれば、女性疾病特約を付加しておくと保障を手厚く備えられます。

女性疾病特約では、妊娠中のトラブルや異常分娩のほかにも、子宮筋腫や乳がん、子宮頸がんといった女性特有の病気に備えられます。また、胃がんや大腸がんなど幅広いがんも保障の対象としている医療保険もあります。

なお、女性疾病特約の保障内容は、医療保険によっても異なるので詳細を確認しましょう。

学資保険も検討する

学資保険は、子どもの教育資金準備をするための保険です。大きな特徴としては、保険料の払込期間中に契約者である親に万が一のことがあった場合、以後の保険料の支払いが免除されたうえで、満期時には当初の予定どおりの満期保険金を受け取れるところにあります。

子どものための保険なので、基本的には子どもが誕生してから加入しますが、出産予定日の140日前から加入できる学資保険もあります。

子どもが生まれてから、誕生日や子どもの性別、氏名などを登録するための手続きが必要になりますが、契約者は父親でも母親でもよく妊娠中でも加入できること、少しでも若いうちに加入することで保険料が抑えられる可能性があることはメリットといえます。

妊娠中でも加入できる医療保険でも、妊娠中のトラブルや異常分娩が保障の対象となるとは限りません。その妊娠については保障の対象外とする条件付きでの加入となることが多いので、約款等で詳しく保障内容を確認しておきましょう。

近い将来に妊娠や出産を希望する方は、妊娠がわかる前に加入しておいた方が、加入しやすくおすすめです。

ライター

氏家祥美(うじいえよしみ)

ファイナンシャルプランナー(AFP)

ハートマネー代表

「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、
2005年からFP相談を始める。
日々お金のことを考えなくても安心な
「家計の仕組みづくり」が好評。

大学の非常勤講師として金融リテラシーを普及するほか、
キャリアコンサルタントとしても活動している。

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