保険お役立ちコラム
高齢者の医療や介護は今後ますます在宅サービスを重視する傾向があります。そうした背景はどこにあるのか、本記事で解説します。また、公的な医療保険や介護保険で使える在宅サービスの制度、自己負担を抑えるために知っておきたい制度についても紹介します。
目次
在宅ケアを支える地域包括ケアシステム
高齢化が急速に進む日本では、団塊の世代が75歳を迎える2025年以降、医療や介護の需要が急増すると予想されています。そのため、可能な限り高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるように、国は「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。
地域包括ケアシステムとは、住み慣れた地域で、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組みづくりのことです。概ね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏内を単位として想定しています。
地域包括ケアシステムの中核となるのが、地域包括支援センターです。地域包括支援センターは、高齢者支援の総合窓口として、介護・医療・保険・福祉など幅広い視点から高齢者をサポートします。
市区町村が設置した施設で、専門知識を持った職員が介護や介護予防、保険福祉、日常生活支援などの幅広い相談に乗っています。介護保険の申請手続きなどもここで受け付けています。
高齢者の公的医療保険
高齢者の公的医療保険の種類
74歳以下の人の公的医療保険は大きく3種類に分かれます。民間企業に勤めている人やその扶養家族となっている人は、勤務先の健康保険に加入します。公務員や私立学校の教職員として働いている人、その扶養家族となっている人は、共済組合に加入します。すでに退職している人や個人事業等をしている人は国民健康保険に加入します。どの制度でも69歳までは窓口の自己負担額は3割ですが、70歳から74歳までは自己負担額が2割に下がります。ただし、現役並みの所得がある人は3割負担です。
75歳になると、働き方や家族構成に関係なく全員が「後期高齢者医療制度」に移行します。医療機関での窓口負担額は原則1割ですが、所得に応じて2割負担、3割負担になります。
公的医療保険で受けられる在宅サービス
病院以外の自宅や高齢者施設等に居ながら診察を受けることを在宅医療といいます。公的医療保険を利用できる在宅医療には、往診や訪問医療、訪問看護などがあります。
往診とは、患者や家族の依頼を受けた医師や看護師が、突発的な病気やケガを診察するために自宅や介護施設等を訪れることです。
訪問医療は、診察計画に基づいて、医師や看護師が定期的に患者の自宅等を訪問し、診察や健康観察を行うことです。
訪問看護は、看護師が患者の自宅等を訪問して、健康管理や医師の指示に基づいたケアを行うことです。訪問看護に関しては、患者の状況等により、公的医療保険を使う場合と公的介護保険を使う場合があります。
医療費が高額になったら「高額療養費制度」
1ヶ月の医療費の自己負担額が限度額を超えた場合には、「高額療養費制度」を申請することで超過分の払い戻しを受けられます。70歳以上の一般世帯(年収156万円から370万円)の場合、外来のみの1ヶ月の一人当たりの限度額は1万8,000円、外来や入院等を含んだ1ヶ月あたりの世帯限度額は5万7,600円となっています。
- ※ 参照 厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(平成30年8月診療分から)p4
上限額は、年齢や所得によって異なります ①70歳以上の方
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf
高齢者の公的介護保険
公的介護保険制度とは
40歳以上になると公的介護保険に加入します。40歳から64歳が第2号被保険者、65歳以上が第1号被保険者となります。第2号被保険者は加齢が原因となる16の疾病で要介護・要支援状態になった場合にだけ公的介護保険を利用できます。バイク事故などによる介護は対象とならないので注意が必要です。
65歳以上の場合には、原因を問わず要支援・要介護状態と認められれば公的介護保険を利用できます。公的介護保険を利用するには、市区町村に申し出て「要介護度」の認定を受けます。要介護度は、要支援1-2、要介護1-5の7段階にランク付けされ、要介護5が最も重度となります。要介護度が重いほど、公的介護保険による介護サービスを利用できます。公的介護保険を使った場合の自己負担額は1割、所得に応じて2割負担、3割負担となることもあります。
介護保険が利用できる主な居宅介護サービスの種類
介護サービスは、在宅で利用できる居宅介護サービスと、介護施設に入居して利用する施設サービスがあります。在宅で利用できる居宅介護サービスには以下のような種類があります。
訪問介護 | ホームヘルパーが自宅に来て、食事・入浴・排せつなどの介助や、掃除・洗濯・食事の支度等を行うこと |
訪問入浴介護 | 専用の移動入浴車で自宅を訪問し、介助を受けながら入浴できるサービス |
訪問看護 | 看護師などが自宅を訪問し、医師の指示のもとに床ずれの手当や診察の補助などを行う |
訪問リハビリテーション | 理学療法士などが自宅を訪問し、自宅でリハビリが受けられるサービス |
通所介護(デイサービス) | 施設に通って、食事や入浴、リハビリテーションを受けられるサービス |
通所リハビリテーション(デイケア) | 病院や診療所などに通って、リハビリを受けるサービス |
ショートステイ | 短期間だけ施設に宿泊して介護や機能回復訓練等を受けるサービス |
福祉用具貸与 | 車いすやベッド、歩行器などのレンタル |
- ※ 参考 LIFULL介護「介護保険の居宅介護サービスとは?」
https://kaigo.homes.co.jp/manual/insurance/service/homecare/ - ※ 参考 ユーキャン「終活アドバイザー講座テキスト2」
P55 図表5-5 主な在宅サービス
介護費が高額になったら「高額介護サービス費」
公的介護保険を利用した結果、1ヶ月の自己負担額が限度額を超えた場合には、「高額介護サービス費」の申請をすると限度額を超えた分が払い戻されます。
世帯の誰かが住民税を支払っている場合、1ヶ月の限度額4万4,400円を超えた負担があれば払い戻しの対象となります。
- ※ 参照 厚生労働省「平成29年8月から月々の負担の上限(高額介護サービス費の基準)が変わります」
https://www.mhlw.go.jp/content/000334526.pdf
公的医療保険と公的介護保険の在宅サービスをうまく使いこなすには
公的医療保険と公的介護保険を併用して使っている世帯もあるでしょう。一人で両方の制度を使っている場合もあれば、夫婦の一人に医療費がかかり、もう一人に介護費がかかっているという場合もあるかと思います。両方の制度にまたがる仕組みを知っておくことで家計負担を減らせる可能性があります。
高額介護合算療養費制度
自己負担額が高額になった場合には、公的医療保険には「高額療養費制度」、公的介護保険には「高額介護サービス費」の制度があります。月の利用限度額が一定以上に達した場合には、それぞれを申請して払い戻しを受けることで自己負担額を減らせます。
それぞれの制度を申請した後、1年間(8月1日から翌年7月31日)を通した医療費と介護費の合計額が一定額を超えた世帯に対しては、「高額介護合算療養費制度」という制度があります(同様の制度を「高額医療合算介護(予防)サービス費」と呼ぶこともあります)。1ヶ月あたりの上限額は世帯年収等によって異なります。
年収 | 自己負担限度額 |
---|---|
年収約370万円以上 | 67万円 |
市区町村民税課税世帯 年収約370万円未満 | 56万円 |
市区町村民税非課税世帯 | 31万円 |
市区町村民税非課税世帯のうち、年金収入80万円以下等 | 19万円 |
- ※ 参照 厚生労働省保険局「高額介護合算療養費制度」p3
高額介護合算療養費制度について(論点)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000143276.pdf
地域包括支援センターの活用
冒頭にも紹介した地域包括支援センターは、地域の医療や介護などの核となる施設です。介護や医療のそれぞれの制度について聞きたい場合、利用できる施設やサービスについて相談したいときには、最寄りの地域包括支援センターで相談しましょう。地域に根差した公的施設なので、その地域ならではの情報を得られます。
民間医療保険や民間介護保険で備える必要性もあり
高齢化が急速に進んでいることに伴い、公的な医療保険・介護保険の財政が厳しくなってきています。そのため、高齢者の自己負担割合が増加傾向にあることに注目しておきましょう。
かつて公的医療保険における高齢者の窓口負担割合は、所得に関わらず1割でした。しかし、平成14年10月からは課税所得124万円以上の場合に限り2割負担に引き上げられました。平成18年10月からは現役並み所得(課税所得145万円以上)の場合に限り3割負担となっています。その後、平成30年8月からは、1ヶ月の医療費自己負担額が高額になった場合の「高額療養費」について、現役並み所得がさらに3つに区分され、高所得者ほど自己負担限度額が高額になるよう変更されました。
- ※ 参照 厚生労働省保険局「医療保険制度をめぐる状況」(平成30年5月25日)p45
基準収入額要件について(患者負担割合・高額療養費自己負担限度額一覧)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000204028_1.pdf
公的介護保険についても同様です。公的介護保険制度がスタートした当初は、介護サービスの自己負担割合は一律1割でしたが、現在は、所得によって自己負担額が2割となる世帯、3割となる世帯があります。
今後の更なる少子高齢化と、これまでの制度の変遷を見ていくと、高齢者の医療費と介護費の自己負担は今後様々な形で重くなっていくことが予測されます。健康維持に努めるのはもちろんのこと、民間の医療保険や民間の介護保険を活用し、自分で備えておくことがますます重要になるでしょう。
在宅医療や在宅介護については地域包括支援センターで相談を。医療費や介護費の自己負担への備えも必要です。
今後ますます医療や介護は在宅サービスを利用して行う傾向になるでしょう。急速な高齢化により公的な医療保険や公的な介護保険の財政が厳しくなっています。民間の医療保険や民間の介護保険で備えておくことも考えましょう。
- ※ 当記事は著者個人の見解・意見によるものです。
- ※ 当記事の内容は作成日現在公表されている情報や統計データ等に基づき作成しており、将来予告なく変更されることがあります。
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- ① 一度解約した生命保険契約はもとには戻らないこと。
- ② 解約返戻金は解約するタイミングによって、払込保険料の合計額よりも少なくなる場合があること(解約返戻金がない保険商品もあります)。
- ③ 健康状態によっては新たに保険に加入できなかったり、加入できても保険料の増加や一部の保障が対象外になるなど特別条件付きの契約となる場合もあること。
- ※ 個別の税務等の詳細については税務署や税理士等、専門家にご確認ください。
ライター
氏家祥美(うじいえよしみ)
ファイナンシャルプランナー
ハートマネー代表
お茶の水女子大学大学院修了。
2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち
2010年よりFP事務所ハートマネー代表となる。
「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、
子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持つ。
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