保険お役立ちコラム

新卒に医療保険は必要?保険に加入する意味とは

※本記事についてのご注意

新卒で社会人になったら、医療保険の加入を検討しておきましょう。医療保険に入る理由や、選び方のポイントについて解説します。あわせて、20代の人が、医療保険の次に入るべき保険についても、ライフスタイル別に解説していきます。

保険加入を検討する際には、次の3つのポイントが重要になります。

何のために加入するか

どんなリスクに備えたいのかを考えると、保険の選択がしやすくなります。新卒社会人にとっては、亡くなった時に備える「死亡保険」よりも、病気やケガをした場合に備える「医療保険」の優先度が高くなります。

必要な金額

そのリスクに遭ったとき、どのくらいの経済的損失があるのかを考えましょう。病気やケガをして入院した場合には、公的医療保険が利用できるため、医療費自体は自己負担3割になります。また、入院期間が長期に渡ったり高度な治療を受けたりして、医療費が高額になる場合でも、公的医療保険には「高額療養費」という制度があります。毎月1日から月末までにかかった治療費等が一定額を超える場合には、超過分の払い戻しを受ける制度です。

いつまでの保障か

医療保険には、一定の保険期間を保障する「定期医療保険」と、一生涯保障が続く「終身医療保険」があります。

定期医療保険のメリットは、10年間など一定期間だけを保障するため、終身医療保険よりも1ヶ月あたりに支払う保険料がお手頃な点が挙げられます。定期医療保険の場合、更新時期を迎えたら、契約者から申し出ない限り、自動更新となるのが一般的です。更新を迎えると保険料は更新時点の年齢で再計算されるため、保険料は上昇しますが、告知をすることなくそのまま更新ができます。

一方の終身医療保険は、保障が一生涯続きます。メリットとしては、加入時点の保険料が一生続くという点が挙げられます。20代の場合、定期医療保険と終身医療保険料の保険料の差はあまりないので、一生保険料が上がらない終身医療保険を選んでおいてもいいでしょう。

自分に合った適切な保険を選べるようになるためにも、保険の基本を知っておきましょう。保険は、保険業法により大きく3つの分野にわけることができます。

生命保険(第一分野)

人の生存や死亡に対して保険契約を結び、あらかじめ決めた保険金を支払います。生命保険会社だけが取り扱える保険で、終身保険、定期保険、養老保険などが該当します。

損害保険(第二分野)

偶然の事故に対して、損失額に応じ保険金を支払います。損害保険会社だけが取り扱える保険です。火災保険、地震保険、自動車保険等が該当します。

医療保険・がん保険等(第三分野)

従来の生命保険(第一分野)、損害保険(第二分野)のどちらにも当てはまらない保険を、第三分野の保険といいます。生命保険会社も損害保険会社も取り扱える保険で、医療保険、がん保険、介護保険、傷害保険などが該当します。

図表1「保険の種類」
生命保険(第一分野) 損害保険(第二分野) 医療保険・がん保険等
(第三分野)
取り扱い保険会社 生命保険会社 損害保険会社 生命保険会社
損害保険会社
保障(補償)の対象 人の生存や死亡 偶然の事故による損失 病気やケガなど
保険金の支払い 定額払い 実損払い 定額払いや実損払い

保険を選ぶ際には、どんなリスクが起こったらどのように困るのかを具体的にイメージしましょう。

新卒に医療保険が必要な理由

生命保険(第一分野)は、死亡に備える保険でしたが、養う家族がいなければ、多額の死亡保険金はいらないと考えていいでしょう。万が一の場合に備えて、お葬式代等を用意しておけばいいでしょう。

損害保険(第二分野)は、偶然の事故による損失に備える保険でした。自動車を保有していたり、自動車通勤をしていれば自動車保険は必要ですが、持ち家がなければ火災保険や地震保険は不要です。

医療保険やがん保険等(第三分野)は、病気やケガなどに備える保険です。新卒社員に最も必要なのは、ここの部分です。養うべき家族や大きな資産を持たない新卒社員にとって、最も大切なのは自分の体です。病気やケガで長期間働けなくなったら、まとまった治療費が出ていきますし、生活費を稼ぐこともできなくなります。

医療保険を第一に備えましょう。

入院時の自己負担平均額

生命保険文化センターの調査によると、入院1日当たりの自己負担平均額は23,300円(図表2)となっています。また、入院期間を通した自己負担平均額は20.8万円(図表3)となっています。この金額には、治療費の自己負担のほか、食事代や差額ベッド代、交通費、入院準備にかかる費用等も含まれています。

図表2「入院1日当たりの自己負担平均額」

図表3「1入院当たりの自己負担平均額」

新入社員は、新生活で何かとお金がかかる時期です。医療保険を備えたら、あとは給与天引きで少しずつでも預金を貯められるように努めましょう。すぐにいろいろな保険を考える必要はありません。少し余裕が出てきたら、下記のような保険も考えるとよいでしょう。

就業不能保険

病気やケガの治療で長期間働けない期間の収入減少に備える保険です。ただし、働けなくなったらすぐに支払われるわけではありません。多くの就業不能保険には60日間の免責期間があるため、働けない期間が60日以上続いた場合に、給付金が支払われます。会社員の場合、病気やケガの療養などで働けない期間については、休業4日目から通算1年6ヶ月まで、健康保険から「傷病手当金」として標準報酬日額の3分の2が支払われます。

傷病手当金のある会社員に向けて、1年6ヶ月まで給付金額を半減することで保険料をお手頃にした「ハーフプラン」を用意している保険会社もあります。

20代と言っても、新卒で就職した後は、ライフスタイルが移り変わっていきます。ライフスタイルによって選ぶべき保険も少しずつ変わっていくことを覚えておきましょう。

独身の場合

20代の独身者が一番に入っておく保険は、「医療保険」です。入院すると入院給付金が支払われ、手術を受けると手術給付金が支払われます。特約として先進医療特約や、通院特約を付加することもできますし、女性の場合には女性疾病特約を付加してもいいでしょう。まだあまり貯蓄がない20代にとって、入院時の医療費の自己負担は手痛いものがありますから、まずは医療保険から加入しておきましょう。病気やケガをしてからでは保険に加入しにくくなるので、健康な時に加入しておくことが重要です。

既婚(夫婦共働きの場合)

結婚後もそのまま共働きを続ける場合には、独身時代とそれほど大きな違いはありません。夫婦それぞれが「医療保険」に加入しておくことが重要です。その後、出産などの可能性を考えると、特に女性の医療保険は重要です。女性疾病特約を付加しておくと、妊娠や出産に伴う異常による入院や手術の際には手厚く備えられます。

死亡保険については、貯蓄性のある終身保険を使って、お互いのお葬式代程度の死亡保障を用意しておきましょう。

既婚(片方が働いている場合)

夫婦の一方が働き、配偶者が専業主婦(夫)をしている場合には、「夫婦の医療保険」と「死亡保険」が必要です。死亡保険については、お葬式代程度の「終身保険」に加えて、家計を支えている側を被保険者として、定期保険等に加入します。

なお、子どもがいない夫婦の年金は、子育て家族に比べてわずかです。子どものいない夫婦の場合、夫婦のどちらが亡くなっても遺族基礎年金は支給対象外となります。会社員の夫が亡くなった場合、妻に遺族厚生年金は支払われますが、30歳未満の妻への遺族厚生年金は5年間のみの有期支給となっています。また、妻が亡くなった場合、妻が会社員であっても、夫には遺族厚生年金は支払われません(妻の死亡時、夫が55歳以上であれば支払い対象となります)。

夫婦の片方が働いている場合、働いている側が亡くなった場合、収入が途絶える可能性もあります。遺族年金を理解して、遺族の生活保障としての死亡保険もしっかりと備えておきましょう。

既婚(子どもがいる場合)

子どもが生まれたら、子どもが成人して無事に独り立ちするまで育て上げる責任が生じます。そのため、夫婦の「医療保険」に加えて、遺族の生活保障としての「死亡保険」を備えましょう。

死亡保険として子育て世代におすすめなのは、「収入保障保険」です。収入保障保険は、被保険者が死亡または高度障害状態となった場合、保険期間が続く間、毎月10万円、15万円というように、毎月一定額ずつ死亡保険金または高度障害保険金が支払われる死亡保険です。

遺族年金額だけでは不足する生活費を補いやすく、遺された家族にとっても生活費として使いやすい保険となっています。

新卒で社会人になったら、まずは医療保険に加入しましょう。病気やケガをしてからでは保険に入りにくくなります。元気なうちが入りどきとなります。医療の備えは一生涯必要です。保険料が途中で上がらない終身医療保険を選んでおくといいでしょう。その後、結婚したり子どもができたりしたときには、死亡保険の検討もしてみましょう。

ライター

氏家祥美(うじいえよしみ)

ファイナンシャルプランナー。ハートマネー代表。

お茶の水女子大学大学院修了。
2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち
2010年よりFP事務所ハートマネー代表となる。
「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、
子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持つ。

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